先日施行した筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術(MILD法)の方ですが、
手術当日の夜に体動が激しかったため、ドレーンが引き抜けてしまいました。
ドレーンの引き抜けは翌日の初回包交の際に発見したのですが、固定糸よりも体側で引き抜けていました。一応、エアタイトネスは保たれていましたが、ドレナージ効果は消失していました。
骨折や人工関節手術ではドレーンが抜けてもさほど問題にならないですが、さすがに脊椎手術でドレーンが引き抜けると術後の硬膜外血腫のリスクが高まります。
幸い、硬膜外血腫併発の徴候は無かったですが、内心ヒヤヒヤしていました。特にMILD法のような低侵襲手術では棘突起も再建するので、術後の硬膜外スペースに余裕がありません。
頚椎手術ほどではないですが、低侵襲の脊椎手術においては術後のドレーン管理が重要であることを、今更ながらに再認識しました。
再発防止策を考えたのですが、このような体動によるドレーンの引き抜けを防止するためには、固定糸を1ヵ所だけでなく2ヵ所作成する必要があると思いました。
もちろん2ヵ所の固定糸でドレーンを固定しても、激しい体動下では抜けてしまう可能性はありますが、1ヵ所だけよりは幾分ドレーン引き抜けのリスクは低下するのではないかと思います。
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腰椎の手術―ベーシックからアドバンストまで必須テクニック (OS NOW Instruction)
腰椎
今日の午前の手術は、筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術
(muscle-preserving interlaminar decompression: MILD法)でした。
今回の除圧高位はL3/4に高度でしたが、変性側弯を認めました。
ご存知のように変性側弯では腰椎が回旋しているため、正中から掘削することが難しいです。
このような変性側弯症例では正確に正中から進入するため、術前のパイロット刺入の段階で手術台を傾けて腰椎の回旋変位を補正するようにしています。
補正前はこのような状態でした。L3/4の正中がどこか分かりにくいです。これでは正中から進入することが難しいので、イメージを見ながらL3の棘突起が中央にくるように手術台を傾けました。
少し分かりにくいですが、L3の棘突起が中央に位置しています。今回は左側を5度ほど下に傾けることで、このような状態に補正することができました。
このように手術台を傾けて腰椎の回旋の補正をすることで、変性側弯の手術といえども、通常の症例と同様に垂直方向に掘り下げて行くだけになります。
脊椎のエキスパートならこのようなお膳立ては不要かもしれません。しかし一般整形外科医の場合には、このような補正を加えるだけで普段通りの手術に早変わりします。
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腰椎の手術―ベーシックからアドバンストまで必須テクニック (OS NOW Instruction)
今日の午前の手術は、筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術(muscle-preserving interlaminar decompression: MILD法)でした。術前でL4/5に高度の狭窄を認めました。
この方は心臓ペースメーカーを留置しているためにMRIを施行することができず、脊髄造影およびCTを施行した結果、上記の診断となりました。
心房細動もあり、普段からイグザレルドを服用して抗凝固療法を行っています。イグザレルドはリクシアナと同じような薬効なので、術前日から服用を中止してもらいました。
いつものようにL4棘突起末梢側の1/2とL5棘突起中枢側の1/5の掘削から開始して、5→3mmのdiamond burrを用いて椎弓の内板を中心に椎弓間を掘削していきました。
今回の症状は右下肢痛なのですが、黄色靭帯を展開したあたりから術野の異常に気付きました。黄色靭帯の右半分だけ暗青色なのです。もしや血腫か?と思いながら掘削を続けました。
脊柱管をドーム状に掘削し終って、いよいよ黄色靭帯を落とそうとしたとき、黄色靭帯と椎弓の隙間から血腫が噴出しました。下の画像のように暗赤色の血餅の状態でした。
暗青色に変色した黄色靭帯は肥厚して硬膜管と癒着していました。硬膜損傷を防ぐため比較的正常に近い部分から黄色靭帯の切除を進めました。
最終的には血腫や癒着を全て解除して右L5神経根の除圧を確認しました。腰椎硬膜外血腫を見たのは久しぶりですが、今回は術前MRIが無かったので予想外の展開に驚きました。
抗凝固療法中の方だったので、後から考えると腰椎硬膜外血腫も鑑別疾患のひとつです。しかし心臓ペースメーカーのためMRI施行不能だったので、実際には手術まで診断不可能でした。
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先週末に講演会に出席してきたこと は昨日お話しましたが、もうひとりの演者も私の友人でした。彼とは大学1回生から偶然にも同じ下宿(共同電話+隔日しか入れない共同風呂)でした。
彼の専門は脊椎外科で、おそらく大学同級生の中では最も臨床能力が高いと思います。今回は最近の脊椎外科のトピックスについて講演しました。
脊椎外科の世界は、すごい勢いで進歩しています。人工関節外科もそこそこ進歩していますが、脊椎外科が進歩するスピードと比べるとウサギとカメのような違いがあります。
話の中でXLIF(eXtreme Lateral Interbody Fusion)とOLIF(Oblique Lateral Interbody Fusion )が出てきました。脊椎外科の世界ではホットな話題で、彼は既に10例ほど経験しているそうです。
XLIFやOLIFは、側腹部から後腹膜腔経由で椎体に到達する椎体間固定術です。後方からアプローチする従来からのTLIF・PLIFと比べて低侵襲で革命的な手術です。
彼は講演の中で、椎体にさえ到達すれば後はサルでもできる手術だと言っていましたが、もちろん椎体に安全に到達することは難しいです。
アプローチの関係で、XLIFは陰部大腿神経損傷(6ヶ月程度で軽快)および股関節屈曲筋力の低下(2週間程度で軽快)を、OLIFでは尿管損傷を併発する可能性があります。
しかしこのような術後合併症併発の危険性を考慮しても、従来法と比較して圧倒的に低侵襲な脊椎固定術なので、今後はグローバルスタンダートになる可能性を秘めています。
彼のアグレッシブに臨床をこなしている姿は関心するばかりですが、その持てる極めて高度な技術や病院の売り上げへの貢献度合に比べて年収が低いことを懇親会の場で嘆いていました。
客観的に彼の技量と売り上げ(年間5~6億円!)を正当に評価すれば、年収3000万円ぐらいでも不思議ではありません。しかし実際の年収は正当に評価されているとは言い難いようです。
酔いも手伝い少しだけ年俸交渉や資産形成の話をしました。高度な臨床能力を持つ勤務医こそ、医療以外のことにも目を向けて実戦的な資産形成法を習得してもらいたいものです。
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今日の午前の手術は、筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術(muscle-preserving interlaminar decompression: MILD法)でした。L4/5およびL5/S1の2椎間で高度の狭窄を認めました。
このような連続した2椎間の狭窄をきたした腰部脊柱管狭窄症の場合、これまでは手術時間短縮のために棘突起縦割式腰椎椎弓形成術を施行してきました。
しかし、棘突起骨片がフリーになるので、腰痛や腰部筋力低下を来たす可能性があります。したがって、今回は2椎間ともMILD法を施行しました。
2椎間連続のMILD法では、間にある椎体の棘突起が非常に短くなることが問題となります。棘突起中枢側の1/5・末梢側の1/2を掘削するので、中央に小指程度の棘突起した残せないのです。
このような小さな棘突起からもしっかりと傍脊柱筋が起始するので、棘突起縦割式と比較して腰部の後方軟部組織のほとんどを温存することが可能です。
こう言ったことを念頭に置いて今日も中枢側から慎重にMILD法を施行しました。L4/5ではL5棘突起中枢側の掘削を最小限に、L5/S1ではL5棘突起末梢側の掘削を最小限にしました。
その結果、L5棘突起を綺麗に温存することができました。棘突起縦割式よりも20分程度余分に時間が掛かりますが、後方の軟部組織温存のためには仕方無いと思っています。
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