先日、調べものをしていた際に、偶然ですがThe Wakayama Spine Studyという大規模なコホート研究の論文を拝読しました。
The Wakayama Spine Studyとは、世界最大規模のコホート研究であるROAD study(東京大学)の一環として実施された研究です。
対象は、和歌山県在住の1009名(男性335名、女性674名)、平均年齢66.3才(21歳~97歳)の地域住民です。相当な規模の研究ですね。
MRI所見上で中等度以上の脊柱管狭窄は、地域住民全体の76.5%、MRI所見上の脊柱管狭窄と症状の双方を有する症候性脊柱管狭窄症は、地域住民全体の9.3%でした。
すなわち、8割近くの地域住民が、MRI所見上で中等度以上の脊柱管狭窄を有しているが、そのほとんどは無症候の脊柱管狭窄症であるという驚くべき研究結果です。
どうやら、無症候性の脊柱管狭窄症は想像以上に高頻度に存在するようです。私は、初めてこの結果を知ったときには衝撃を受けました。
更にこの数字を読み込んでいくと、症候性の脊柱管狭窄症は、脊柱管狭窄を有する住民の12.2%に過ぎないことになります。 意外なほど少ないですね!
LCSのほとんどは、無症候性なのです。 腱板断裂の講演を拝聴した時にも驚きましたが、さまざまな疾患において、無症候性の方はかなり多いのでしょう。まさにトリビアでした。
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。