整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

腱板断裂

痛い腱板断裂と痛くない腱板断裂

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先日、拝読した雑誌に興味深い特集がありました。東北大学の山本宣幸先生による「痛い腱板断裂と痛くない腱板断裂 その違いは?」です。要旨をまとめてみました。




多くは「痛くない腱板断裂」


一般住民664人のポータブル超音波診断装置を用いた調査の結果、664人のうち147人(22%)に腱板断裂を認めた。40歳以下の腱板断裂はなく、加齢とともに頻度が上昇した。


しかし、症候性腱板断裂は、腱板断裂のみられた住民の35%に過ぎなかった。断裂は50歳台から生じて加齢とともに増加し、症候性断裂と比べて無症候性断裂の頻度が増加する。




断裂拡大と痛み


外傷性断裂や若年者の断裂は別として、基本的に腱板断裂の治療の第一選択は保存治療である。手術治療では、小中断裂の術後成績は良好であるが、大広範囲断裂は成績が劣る。


断裂拡大の危険因子は下記のごとくであったが、興味深いことに職業や年齢は、断裂進行の危険因子ではなかった。また、断裂拡大群で痛みの悪化がみられたのは29%に過ぎなかった。

  • 喫煙
  • 断裂長が1cm以上2cm未満の断裂
  • 完全断裂




「痛い腱板断裂」と「痛くない腱板断裂」に断裂形態に差はあるのか?


両群間に断裂の大きさや形態に差は無かった。





「痛い腱板断裂」と「痛くない腱板断裂」の差は何なのか?


インピンジメント徴候陰性、非利き手側、外旋筋力低下なしの3項目を満たす腱板断裂の93.8%は無症候性だった。肩峰下インピンジメントを予防する肩甲骨の機能改善が重要である。


腱板断裂の痛みの原因として肩峰下滑液包炎や肩甲上腕関節包炎が指摘されているが、その存在は証明されていなかった。骨シンチグラフィーを用いた研究で、炎症の関係が示唆された。





日常臨床でよく遭遇する腱板断裂ですが、私は肩関節外科医ではないので、よく分からない点が多いです。今回の特集を拝読して、腱板断裂に対する理解が少しだけ深まった気がします。






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肩腱板断裂のトリビア

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先日、群馬大学整形外科学教室の前教授である高岸憲二先生の講演を拝聴しました。講演内容は、肩腱板断裂についての疫学調査でした。


群馬大学のグループは、群馬県利根郡片品村で行われた特定検診において運動器検診を行い、腱板断裂を含めた整形外科領域の各種疾患の有病率を調査しました。


腱板断裂の調査には超音波検査を用いたそうで、結果は下記のごとくです。
  • 50歳以上の住民の26.6%に腱板断裂を認めた
  • 高齢になるとともに有病率が高くなる
  • 背景因子は①外傷の既往 ②利き腕側 ③年齢


上記の結果の中で無症候性の腱板断裂に関しては下記のごとくでした。
  • 症候性断裂の割合は34.6%、無症候性断裂は65.4%
  • 無症候性断裂の割合は、年代に関わらず腱板断裂例の約2/3であった


う~ん、 これはかなり興味深い結果です。これほど無症候性腱板断裂の割合が多いとは思いませんでした。人口比で26.6%×65.4%=17.4%の方は、無症候性腱板断裂ということになります。


このことから、肩関節周囲炎と言われている患者さんの中にも、かなりの割合で腱板断裂が紛れ込んでいる可能性が示唆されます。


腱板再建術後の再断裂例でも、再断裂が大きくなければ術後成績は良いことが知られています。 何に対して、何を目的に手術を施行しているのか? 肩関節は奥が深いですね。。。





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腱板断裂が日常生活動作に及ぼす影響 ~ 一般住民における痛みのない肩を含めた検討 ~

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Jornal of Orthopaedic science掲載論文要旨で、興味深い論文があったので抜粋します。
群馬大学の中島大輔先生の”腱板断裂が日常生活動作に及ぼす影響 ~ 一般住民における痛みのない肩を含めた検討 ~”です。


・ 対象は、一般住民462名924肩(平均年齢61.3歳)
・ 地域検診方式で、両肩の超音波検査を施行
・ 断裂群は99肩、非断裂群は825肩
・ 腱板断裂を有している場合は①肩関節の夜間痛、②肩挙上時の筋力低下 が有意に高かった


意外と腱板断裂している人が多いなというのが実感です。
普段、肩関節周囲炎として治療している患者さんの中にもたくさん含まれているのかなと思いました。

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