整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

腸腰筋膿瘍

化膿性椎間炎は正中矢状断だけで診断するな!

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先日、80歳台前半の方が腰痛で初診されました。
1週間前から誘因なく疼痛が発症したとのことです。


歩行は何とか可能ですが、かなり痛そうです。単純X線像では、臥位・座位側面像の比較でも著変ありません。そこで MRIを施行しました。



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矢状断では L3, 4椎体に高信号領域を認めるものの、骨折ではなく OAっぽいです。念のため冠状断も確認しました。何となく違和感を感じます...。



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よく見ると右腸腰筋が腫大しているではありませんか!もう一度矢状断を確認すると、L3/4の右外側端で椎間板の一部に高信号領域を認めます。



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急いで血液生化学検査を施行すると、WBC/CRP 9000/8.7で、ESR 1Hが 73mmでした。どうやら腸腰筋膿瘍および化膿性椎間板炎のようです。ちなみに熱発はありませんでした。


脊椎圧迫骨折しかアタマになくて、化膿性椎間板炎は想定外でした。今回の教訓は、STIRの正中矢状断で椎間板の高信号領域がなくても、化膿性椎間炎を否定できないことでした。






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股関節痛で仰臥位を嫌がるの答えは?

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先日、整形外科の常勤医師が居ない病院で夜診をしている際に、興味深い患者さんの診察を行いました。何でも右股関節が痛くて歩行できなくて入院になったそうです。


大腿骨近位部骨折はありませんか? という対診依頼だったのですが、単純X線像では特記する所見はありませんでした。自分で車椅子から診察台に移れる程度の疼痛のようです。


しかし、診察台で仰臥位になってくださいと言っても「痛くて上を向けない」と言って、すぐに側臥位になってしまいます。う~ん、困った患者さんだな・・・


強く仰臥位を促すと、両膝を屈曲位にします。高齢患者さんなのではっきり分からないのですが、膝を伸ばすと右股関節に疼痛が走るようです。ここてピンときて、CTを撮像しました。



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やはり、図星でした。右腸腰筋膿瘍です。熱発はなく、血液生化学データの炎症値は軽度上昇程度です。総合的に考えると、結核性の腸腰筋膿瘍を強く疑います。いわゆる流注膿瘍です。


高齢者の進展に伴って、腸腰筋膿瘍は比較的ポピュラーな疾患になってきています。私の経験では、年に1~2例ほどのペースで治療している印象です。


しかし、起炎菌は黄色ブドウ球菌や大腸菌等のグラム陰性桿菌が多く、症状・身体所見・血液生化学所見が派手な症例が多いです。今回とは全く状況が違います。


今回の症例では、後から考えるといわゆるpsoas positionをきたしていたのですが、仰臥位を嫌がるので、初見時には分かりませんでした。


「股関節部痛のため仰臥位を嫌がる = psoas position」が、私にとってのTIPSでした。特に流注膿瘍のように、身体所見や血液生化学所見に乏しい症例では注意が必要だと思います。






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股関節痛の鑑別には腸腰筋膿瘍も!

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先日の外来で、2日前から誘因無く発症した股関節部痛を主訴にした方が初診されました。
特に外傷の既往は無いとのことですが、70歳台だったので骨折を第一に疑いました。


身体所見的には明らかに股関節由来の痛みのようなのですが、単純X線像では明らかな骨折を認めませんでした。???と思って診察台に寝てもらうと、股関節の伸展制限がありました。


う~ん、これはいわゆるpsoas positionです・・・。そのまま血液生化学検査と下腹部CTを施行したところ、患側の腸腰筋の腫脹を認めました。


WBCは正常上限ですが、CRP・ESRとも軽度上昇しています。状況判断的に腸腰筋膿瘍と診断しました。まだ発症して2日なので腸腰筋の腫れ方もさほどではありません。


感染症治療では起因菌の同定が重要です。腸腰筋膿瘍ではCTガイド下での腸腰筋穿刺およびドレナージが必須です。しかし通常、腸腰筋膿瘍が単独で発症することはあまりありません。


更に問診すると、20年以上前に弁膜症で弁置換術を施行していることが判明しました。おそらく感染性心内膜炎に起因する腸腰筋膿瘍と予測されます。


残念ながら、私が勤務する病院では心臓血管外科が無いので感染性心内膜炎への対応が困難です。やむを得ず心臓血管外科のある近隣の総合病院に紹介しました。


バタバタと外来中に総合病院への紹介まで含めて全てが完結しましたが、やはり身体所見(今回はpsoas position)が重要であることを改めて認識しました。



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腰痛では腸腰筋陰影にもご注意!

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昨日は出張先での外来でした。
相変わらず連休明けの火曜日は激混みしており、新患患者さんだけで40名近く診察しました。


さて、多忙な外来も終盤に近づいた頃、常勤の年配のドクターがひょっこりやって来ました。先週入院させた化膿性脊椎炎の患者さんの経過報告に来られたのです。


この患者さんは、7月から腰痛が出現した30歳台の健康な方です。腰痛が続くため他のドクターがMRIをオーダーされたのですが、技師さんが化膿性脊椎炎に気付いて私がキャッチされたのです。


血液生化学データではWBCは正常範囲内でCRP/ESRは軽度上昇していました。MRIではL1-3の椎体がFat Suppressionで高輝度になっていましたが、腸腰筋の腫大や輝度変化を認めませんでした。また、椎間板の輝度変化もさほどではありませんでした。


通常、化膿性椎間板炎から化膿性脊椎炎に至るのでなんとなく違和感を感じる画像所見でしたが、臨床的には化膿性脊椎炎で間違いなかったので常勤医に引き継ぎました。血液培養でグラム陽性菌が検出されたそうです。


去り際に、「そういえば7月の初診の段階で単純X線の正面像で腸腰筋陰影が腫大していたから、化膿性脊椎炎の自然治癒の過程だったのだろうな」とおっしゃられました。


「!」と思ってその方の画像を確認すると、確かに7月の初診の単純X線正面像で右側の腸腰筋陰影が腫大して腰椎横突起のラインを越えていました・・・。


最近はすぐにMRIを撮像できるという慢心があるので、昔のドクターのように腰椎の単純X線像を読み込むことが少なくなっているのかもしれません。初心に戻って、単純X線正面像の腸腰筋陰影にも注意が必要だなと思いました。



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腸腰筋膿瘍に対する股関節前方アプローチ(Smith-Petersen)

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昨日の午後は、腸腰筋膿瘍に対する掻爬洗浄術でした。
この方は透析患者さんで、1週間前から左股関節部痛が出現しました。


5日前に初診・入院してセフェム系抗生剤を投与しましたがWBC/CRP 13000/32と高値が続き、昨日から血小板数が低下してきたので救命のために手術を選択しました。


腸腰筋膿瘍は糖尿病や透析施行症例のような易感染性の方に発生することが多いです。化膿性脊椎炎(椎間板炎)に続発するケースが多いのですが、今回は脊椎や椎間板に感染を認めませんでした。


もともと腸腰筋は血流が良いので抗生剤投与のみでも軽快することが多いです。CTガイド下にチュービングしてドレナージすれば更に良いのですが、今回のように保存治療に抵抗性の場合には手術を選択せざる得なくなります。


手術は、Smith-Petersenに準じて骨盤~股関節前方アプローチで進入します。腸骨筋~股関節に膿瘍を形成しているケースが多いので、鼠径靱帯を挟んで骨盤腔側と股関節側の両方から膿瘍を掻爬する必要があります。


骨盤腔側は腸骨内板を骨膜下に剥離すると腸骨筋の膿瘍形成部に容易に到達することが可能です。比較的浅層まで膿瘍を形成していることが多いため、弓状線まで展開することはあまり無いように思います。


股関節前方の展開は、殿部下に枕を入れてやや患側の骨盤を持ち上げるようします。筋間を剥離すると大腿直筋を確認できます。大腿直筋には外側大腿回旋動脈が伴走しているので注意が必要です。


患肢を動かして大腿骨頭を触知してから、カテラン針で関節裂隙の位置を確認します。前方関節包は後方に比べて遥かに厚いです。あまり股関節の前方からアプローチすることは無いと思いますが、腸腰筋膿瘍はそれほど珍しい疾患ではないのでマスターしておいて損は無いと思います。






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