手術中の体温が低下すると創治癒不全や感染を併発しやすいと言われています。最初に報告されたのは、1996年の NEJM です。


術中に体温を正常体温に保つ群と低体温のままの群とに割り付けて調べたところ、低体温群が有意に創部の感染が多く、入院期間も有意に長くなると報告されました。


それ以降、いくつかの術中体温に関する報告がありますが、通常の麻酔→手術では中枢温で計測しても、正常体温の36~37度よりも1~2度低下することが多いそうです。


これらの報告を受けて、術中の中枢温を正常体温に維持することの重要性が麻酔科医師を中心に意識されるようになりました。


ただ、術中の中枢温を正常に保つことが、本当に創治癒不全や感染予防に有効なのか否かは、未だに論争が続いているようです。


そして、術中の中枢温を正常に保つことは意外と難しく、ベアハッガーのような温風式加温
装置を長時間使用していると低温熱傷を併発する可能性まで示唆されています。


このように
術中体温を正常体温に保つ是非に対するさまざまな意見や、中枢温を正常に維持する難しさがあるため、実際に日々の手術に導入するのは難しそうです。


しかし、知識として低体温は創治癒不全や感染を併発しやすくなる可能性が高いので、日常臨床においては頭の片隅に置いておく方が良いと感じました。






★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

 
初学者がTKAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です