先日、臨床研究における統計の講演を拝聴しました。
演者は、京都大学医学統計生物情報学講座の森田智視教授でした。


一般的に、ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)は、観察研究よりも上位評価を受けています。


RCTでは評価のバイアスを避けて客観的に治療効果を評価できるため、群間にバイアスがかかる危険性の高い観察研究よりも信頼性が高いとみなされる傾向にあります。


しかし、医療においては必ずしもRCTは万能ではありません。ご存知のように治験の第III相試験(フェーズ III)ではRCTが基本です。この点に関しては論を俟ちません。


しかし、臨床試験ではバイアスのかからない2群間で比較できるものの、実臨床の場ではバイアスのかからない2群間で治療方法を比較することは倫理的に大きな問題があります。


この問題を解決する手法として注目されているのが、傾向スコア(propensity score プロペンシティースコア)を用いた疫学観察研究です。


性別・年齢・基礎疾患などのさまざまな条件をスコア化して、各治療を受けた患者さん同士をマッチングします。こうすることでRCTのように、バイアスのない2群を抽出します。


傾向スコアを用いることで、実臨床(リアルワールド)でも、RCTのような高い質を持つ観察研究が可能となります。


傾向スコアマッチングの実行方法について解説されたPDFが、森田教授のホームページからダウンロード可能です。興味のある方は是非アクセスしてみてください。




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