先日、警察から交通事故の患者さんの照会書が届きました。
この患者さんは軽症の外傷性頚部症候群です。
警察から照会書が来た理由は、見込み治療期間が3週間の診断書を発行したためです。初診時は物損事故でしたが、人身事故に変更になり2週間以上経って診断書希望で再診しました。
2回目の受診時点で既に受傷から2週間以上経過しており、その時点でも後頚部の痛みが残存していたため、やむを得ず初診から3週間の診断書を発行しました。
警察的には3週間の治療期間は「重傷」になるとのことで、問い合わせの書面が届いたのです。私は30日以上で「重傷」、それ未満は「軽傷」だと思っていましたが、今回は少し違ったようです。
しかし、問題の論点はそこでは無く、どうみても軽傷の患者さんの診断書に、3週間の治療期間を必要とするという文言を書かざるを得なかった点にあります。
受傷から2週間以上経過してから、初診時からの治療見込期間を診断書に記載することは、なかなか難しいです。どう見ても軽傷なのに、治療期間は重傷になる可能性があるのです。
このあたりのウマイかわし方がないのか調べてみましたが、妙案を思いつけませんでした。警察は「事故日」と「事故日からの治療期間」に極めてうるさいです。
したがって、2回目の再診日から起算した治療期間では受け付けてもらえないことが多いのです。私的にはどうでも良いことですが、警察は「事故日」と「事故日からの治療期間」に拘ります。
このようなつまらない問合せに対する回答書を作成するに、かなりの無駄な時間を浪費してしまいました。何かウマイ方法があれば教えて欲しいものです。
2015.8.5 追記
コメントで、「整形外科17年目です」先生から秀逸な対応方法を御教示いただきました。
以下に転記させていただきます(一部加筆)。
交通事故の診断書の加療見込みは、疼痛期間や治癒までの期間ではなく、重症度をあらわす便宜上のものです。
今回のケースだと ○年○月○日 交通事故で上記受傷。
当院初診日は○年○月○日である。
レントゲン上も明らかな外傷性の変化を認めず、
受傷日から約2週間程度の加療を要する外傷であったと診断する。
と記載するように先輩から指導され、その通りにしています。それで揉めた事はなく、受診するまでもない軽症の事故で重い罰金が科せられる可哀想な加害者を作ることもないと思います。
警察
ご存知の方も多いと思いますが、2014年2月に東京女子医大病院で首のリンパ管腫を取り除く手術をした2歳の男児が急死した事件がマスコミ各社から報道されました。
現時点ではプロポフォールの過量投与が問題視されています。このあたりの事実関係を正確に把握することが困難なので論評は控えますが、ある弁護士のコメントが引っ掛かりました。
週間文春の記事によると、「異状死の24時間以内の届け出を義務づけた医師法に触れる可能性がある」と医療事故研究会を主宰する森谷和馬弁護士が指摘しているのです。
医療過誤の疑いがある場合は異状死とされます。医師法第21条にも、異状死は24時間以内に所轄警察署に届け出なければならないと規定されています。
整形外科医が遭遇するケースで最も考えやすいのは、入院患者さんの突然死だと思います。なにしろ大腿骨近位部骨折等のハイリスク患者さんを多数抱えており他人事ではありません。
現実問題として明らかに事件性や医療過誤の可能性が高いケースは稀で、大半は死因も分からず、そもそも異状死に該当するのかさえ判断に苦しむケースがほとんどではないでしょうか。
前々から何となく心の中にわだかまっていた事なのですが、大学の病理医と話をする機会があったので、思い切ってこのあたりの疑問点をお伺いしてみました。
突然死に対する病理医の見解 につづく
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昨日は勤務先の病院での当直でした。
当直は内科医師と私の2人体制なのですが、隣で診察していた内科でトラブルが発生しました。
トラブルといっても、こちらに落ち度は無い完全な言い掛かりでした。ほぼ脅迫に近い醜い状況だったので、事務に連絡したうえで診察室で内科医の後ろに立つことにしました。
このような場合、「何かありましたか」などと声掛けして相手よりも多い人数で対処することが鉄則です。トラブルの現場からは逃げたくなりますが、ここは勇気を出して皆が集まってくるべきです。
私の入室時には看護師さんが輩の隣に居たのですが、恐くて身動き取れない様子です。後で彼女に聞くと、いきなり診察室に闖入してきたので逃げることができなかったようです。
しばらく輩の言い分を聞いていましたが、支離滅裂な言動のため危険な状況だと判断しました。このような場合、私は躊躇せず警察に通報することにしています。
事務当直はまだ2年目で完全に舞い上がっている状況だったので、警察への通報を指示しました。罵声を浴びつつ待つこと5分ぐらいで警官が到着して、何とか事なきを得ました。
今回の件は、威迫に該当します。録音等をしていないかぎり脅迫の事実は立証しにくいですが、威迫の場合は本人が怖いと感じた時点で成立します。
違法行為ではなく準違法行為ですが警察を呼ぶ理由にはなると思います。警察に通報することに対して心理的な抵抗感がありますが、通報を躊躇して大事に至っては元も子もありません。
身の危険を感じたら、①複数での対応 ②迅速な警察への通報 を心掛けたいものです。
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