私は、常に総合商社の動きをウォッチしています。株式投資の対象としてだけではなく、自らの資産形成戦略の方針を決める材料のひとつとして観察しています。
ほとんどの人は株式・FX・仮想通貨などのペーパーアセットへの投資に留まりますが、私が投資対象のオペレーションまで自ら行うこともあるのは、総合商社の影響です。
彼らは資源の持分購入などを通じてペーパーアセットへの投資も行うものの、自らオペレーションすることで事業価値を挙げて高収益を叩き出すことが多いです。
そんな大手総合商社5社の一角を占める丸紅が、財務基盤の強化に舵を切りました。かつて、丸紅は1990年代のバブル崩壊やアジア通貨危機の影響で、経営危機に陥りました。
存亡の危機に立たされた丸紅は、財務強化に邁進して大きく財務内容を改善することに成功しました。ところが、2000年台の資源バブルの積極投資が裏目に出ます。
北海やメキシコ湾の油ガス田権益関連やチリ銅事業などで、大きな減損損失を計上したのです。財務悪化を受けて、2500億円の資金調達を敢行しました。
大手総合商社では連結純利益をベンチマークとする激しい順位争いを繰り広げています。しかし、あえて丸紅は連結純利益目標を引き下げ、財務基盤固めを推進することにしました。
その理由は、金融緩和が縮小に向かえば、格付けの低い会社は資金調達コストが膨らみ、事業計画の変更を余儀なくされるからです。
「過去十数年間は異常ともいえる金融緩和がつづいたが、 今後は正常化に向かい、今までのような低コストでの資金調達は難しくなる」と丸紅の國分社長は予測しています。
丸紅のような超巨大商社のトップの考察は傾聴に値します。世界中に張り巡らされた情報網から吸い上げた情報を元にした分析なので、単なるアナリストの意見とは重さが違います。
丸紅の経営方針変更は、私たちのような末端の投資家の投資戦略にも参考になります。特に融資が前提の不動産投資家は、丸紅の財務基盤強化への方針転換を重くみるべきでしょう。
ここ数年の超低金利のため、現状では1%未満の低金利ではあるものの、変動金利を選択している人が多いのではないでしょうか?
例えば0.7%の変動金利でキャッシュフローが回る計算で購入した物件の場合、金利が1.5%になったときの影響度を測るストレステストを確認しておく必要があります。
ちなみに、ス〇〇スキームの場合は、5%程度の金利と読み替えましょう。まちがっても1.5%なんて、オレが借りている4%の金利からみれば屁みたいなものだ! は通じません。
この程度の金利上昇でキャッシュフローが回らなくなるようであれば、残念ながら潜在的な危機的状況と判断してもよいかもしれません。対策としては、下記3つがあります。
- 長期固定金利への借り換え
- キャッシュを手元に積み上げて金利上昇局面での元本削減の資金を蓄える
- 物件売却
いずれも難しい選択枝ですが、現状に甘んじて惰性で過ごすことは少々危険かもしれません。敢えて言うなら②>①>③でしょう。ちなみに丸紅は②や③に近いです。
あまりに異常過ぎる経済環境なので、過去の知識を応用しにくいのですが、「異常」を「正常」と勘違いしないようにだけはしておきたいものです。
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