先日、40歳台女性の慢性腰痛の患者さんが初診されました。
単純X線像で、両仙腸関節・恥骨結合に硬化像を認めます。


腰椎椎体には付着炎を疑わせる骨棘形成が著明です。CRP, ESRとも亢進していました。いわゆる、軸性脊椎関節炎(axial spondyloarthritis:axial SpA)の分類基準を満たしています。

 



軸性脊椎関節炎分類基準
 
3カ月以上続く腰背部痛、発病時が45歳未満 
+ 
① 画像診断で仙腸関節炎(※1)が認められる。脊椎関節炎の特徴が1項目以上ある
 
 
または 
 
 
②  HLA-B27が陽性。脊椎関節炎の特徴(※2)が2項目以上ある


※1  
X線あるいは MRIによる仙腸関節炎
MRIにより活動性(急性)仙腸関節炎がある
X線所見:仙腸関節炎が両側2度以上,もしく は片側3度以上(1984年改正ニューヨーク診断 基準)

※2 
脊椎関節炎の特徴 炎症性背部痛(専門医),関節炎,付着部炎(踵), ぶどう膜炎,指炎,乾癬,クローン病/潰瘍性大 腸炎,非ステロイド性抗炎症剤に良く反応する, 脊椎関節炎の家族歴, HLA-B27が陽性,CRPの亢進




う~ん、どうやらこの方はaxial SpAのようです。axial SpAは、2009年には仙腸関節の MRI所見を加えて、軸性脊椎関節炎分類基準が導入されました。



当初、axial SpAは欧米中心の疾患概念でしたが、2009年以降には内科系リウマチ医師が中心となって本邦に導入されました。実は、整形外科系の私にはしっくりこない概念です・・・


さて、axial SpAの治療ですが、両極端な治療しかなくて困ってしまいます。最も取り組みやすい治療法は、セレコックスなどのCOX-2阻害剤の処方です。



結構よく効くとの評判ですが、私の経験では残念ながら著効例は多くありません。一応、その次の策はSASPですが、これもなかなか著効しない印象です。


その次は、TNF-α阻害薬となります。しかし残念ながら、TNF-α阻害薬によって脊椎の骨化進行を抑制するというエビデンスはまだありません。


専門施設のリウマチ医師の間では、「MRIの進歩によりSpAの全体構造が変わった」と言われているようですが、場末病院の医師の立場では治療法が付いて行っていない印象です。


長期成績が不明にも関わらず、高価な生物学的製剤を導入を勧めることは、場末病院の医師の立場ではなかなか厳しいです。axial SpAって難しいですね・・・






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