今日の午前は外来でした。
30歳台前半の弾性が1年前から続く投球動作時のゴリゴリ音を主訴に初診されました。


この方は競技レベルでの野球を続けているとのことでした。診察すると確かに右側の投球動作時に肩甲骨下角付近で轢音を触知します。自発痛や圧痛等は特に認めません。


単純X線像では明らかな異常所見を認めませんでしたが、身体所見から弾発肩甲骨(snapping scapula)と診断しました。私自身はここまではっきりとしたsnappingを初めて診ました。


弾発肩甲骨とは、肩関節運動の際して肩甲骨と胸郭との間で不適合が生じて轢音を生じる状態のことを言います。原因は①骨性 ②筋肉軟部組織性 ③滑液包性 に分けられます。


最も多いのは骨性で、肩甲骨や肋骨に発生した良性骨腫瘍によるものが報告されています。診断は単純X線像およびCTで、骨性の場合には原因が判明します。


単純X線像やCTで原因がはっきりしない場合には、透視下に肩甲骨と肋骨の動きを観察すると、轢音の原因が分かることがあるようです。今日の方は②もしくは③です。


治療は、①骨性の場合には腫瘍切除等の観血的手術を、②筋肉軟部組織性や③滑液包性では保存治療が推奨されています。


今日の方は、投球動作時の轢音がすごいので放置しておくと筋肉が切れてしまうのではないか?と心配になって受診したとおっしゃられていました。


①以外での弾発肩甲骨は根治が難しいですが、轢音はそれほど心配無いことを説明すると安心して帰られました。整形外科の疾患にも、いろいろあるものです。



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