整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

鋼線締結法

TKA: 膝蓋骨骨折を併発したら・・・


人工膝関節全置換術(TKA)は、THAと比べてピットフォールが少ないです。
しかし、膝蓋骨低位や高度外反膝などの比較的難症例ではそれなりに注意が必要です。


例えば、膝蓋骨低位症例では展開が難しく、膝蓋骨の排除に苦労することが多いです。膝蓋骨の排除で無理をすると、膝蓋腱脛骨停止部が剥がれたり膝蓋骨下極骨折を併発します。


膝蓋骨非置換のTKAであっても、膝蓋骨周囲の損傷はリカバリーが難しいです。術者は常にこれらを念頭に手術に臨むべきですが、不幸にして併発した場合どうすればよいでしょうか?


膝蓋骨下極骨折や膝蓋腱脛骨停止部剥離を併発した場合には、膝蓋腱損傷として治療を行います。成書ではAOの4.5mm皮質骨スクリューと軟鋼線を用いる方法が記載されています。


しかし、Tibial compornentが脛骨に設置されている状況では、4.5mmの皮質骨スクリューを脛骨結節に挿入することは二次性骨折を併発する危険性を伴います。


この場合、4.5mmの皮質骨スクリューの代わりに2.4mm K-wire等で代用すると良いでしょう。そして膝蓋骨置換症例では、2.4mm K-wireを膝蓋骨に刺入することさえ危険を伴います。


この場合には14Gサーフロー針などを用いて膝蓋骨周囲に1.2mm軟鋼線を誘導します。14Gサーフロー針を膝蓋骨縁ぎりぎりに刺入することで、膝蓋骨縁に軟鋼線を誘導可能となります。


膝蓋骨中枢側縁と内外側縁に沿って、14Gサーフロー針を用いて3回「コ」の字状に軟鋼線を誘導します。こうすることで、軟鋼線が膝蓋骨縁の20時~4時部分に通ります。


膝蓋骨ぎりぎりに軟鋼線を半全周性に通すことで、2.4mm K-wire無しでも十分固定性を期待できる鋼線締結法を施行することが可能となります。


このようなプチ知識を頭の片隅に置いておくだけでも、万が一の事態に遭遇したときにも冷静に対応できると思います。





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膝蓋骨下極骨折はヒヤヒヤです


先日、膝蓋骨下極粉砕骨折の手術を施行しました。CTでは下極骨片が粉砕していましたが、骨膜の連続性があるから通常の鋼線締結法でOKと判断しました。


術前 - コピー



しかし、実際に骨折部を展開すると下極骨片は文字通りバラバラに粉砕していました・・・。小児のスリーブ骨折とは少し違いますが、固定性をあまり望めない点では似ていると思います。


幸い、膝蓋腱の起始部と膝蓋骨下極の皮質骨との間の連続性はありました。下極骨片自体は皮質骨も含めて粉砕していたものの、何とか軟鋼線で押さえ込むことができました。


術後 - コピー



鋼線締結法終了後におそるおそる他動的に膝関節を屈曲したところ、骨折部は安定していたため一安心しました。やはり膝蓋骨下極に近い骨折はひやひやしますね。


通常の膝蓋骨骨折では私はナカシマメディカルのリングピンを利用しています。しかし、今回は下極骨片から逆行性に刺入する必要があるので、久しぶりにK-wireを使用しました。


中枢骨片からリングピンを用いて下極骨片まで刺入しても良かったのですが、ターゲット(膝蓋骨下極)が小さいので、手術時間を短縮するためにも逆行性の方が有利という判断です。




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膝蓋骨骨折: リングピン使用時の工夫


先日、膝蓋骨骨折に対する骨折観血的手術を行いました。
膝蓋骨骨折はポピュラーな骨折ですが、下極近くの粉砕骨折だったので少し緊張しました。


骨折治療はロッキングプレートの登場などもありどんどん進化していますが、膝蓋骨骨折では今でも鋼線締結法に勝る治療方法は無いと思います。


私は膝蓋骨骨折の手術では、ナカシマメディカルのリングピンを愛用しています。リングピンのメリットは中枢側で絶対に軟鋼線が脱転しないことです。この安心感はK-wireでは得難いです。


しかし、この安心感と引き換えにリング内に軟鋼線を通すことは比較的難しいです。私は16Gのサーフロー針を使用して1.2mmの軟鋼線をリングピンに通しています。


まず、透視下に側面像で膝蓋骨にリングピンを刺入します。次に電気メスを用いて膝蓋骨中枢端を直視下に展開します。そして、リングが膝蓋骨中枢端に接するまで刺入します。


この段階で16Gのサーフロー針を大腿四頭筋側方から刺入して2本のリングの間を通すのです。16Gのサーフロー針なら1.2mmの軟鋼線を外筒の中に通すことが可能です。


サーフロー針を利用することで、リング内に軟鋼線を通す手間が大幅に軽減されます。リング内に軟鋼線を通すことが苦手な方は、一度サーフロー針を試されたら良いかもしれませんね。



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肘関節拘縮の尺骨肘頭骨折で大苦戦


昨日の午後は尺骨肘頭骨折に対する関節内骨折観血的手術でした。
骨接合は鋼線締結法で行いました。


整形外科医にとって尺骨肘頭骨折は非常にポピュラーな骨折なので、粉砕が高度な場合を除いて術中に苦労する場面は少ないと思います。しかし、昨日の方は違いました。


受傷前から肘関節の伸展制限(屈曲拘縮)があったため、肘関節を-30度ぐらいまでしか伸展できなかったのです。どうも肘関節自体が高度に拘縮している可能性があります。


おまけに受傷から2週間近く経過していたため整復に難渋しました。整形外科常勤医が居ない病院からの転院患者さんで、術中所見から考えると受傷時期自体が怪しいものです。


いくら肘頭に停止する上腕三頭筋を剥離しても、骨折部の間隙が2cm程度あります。やむを得ず、アキレス腱延長の際に施行するZ延長術に準じた方法で上腕三頭筋を延長しました。


これで何とか肘頭骨片を整復することが可能となりましたが、尺骨肘頭骨折の手術に際して骨片間の間隙で苦労したことは初めての経験です。


後から考えると、手術せずにそのまま経過観察(=手術適応無し)が妥当だったのかもしれません。今後は肘関節拘縮が高度な症例では、手術適応を慎重に見極めたいと思います。



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上腕骨大結節骨折に対するPhilos plate


今日の午前は、上腕骨大結節骨折に対する骨折観血的手術でした。
使用した内固定材料は、シンセスのPhilos plateです。


展開は大結節直上の三角筋をスプリットしました。まず、大結節骨片にファイバーワイヤー数本を掛けます。このファイバーワイヤーは、下記の如くの2つの役割があります。


① 整復補助デバイスとして使用 
② Philos plateで固定後に、軟部組織ごとプレートに大結節骨片を結わい付ける 


大結節骨片に直接単鋭鉤を掛けて整復操作を繰り返すと、術中骨折を引き起こす原因となります。そこで①のように軟部組織に掛けたファイバーワイヤー越しに整復すると安全に整復することが可能となります。


②は、プレートの穴にファイバーワイヤーをあらかじめ通しておく必要があります。プレート越しに挿入できるスクリューだけでは少し固定性に不安が残るので、それを補う意味でプレートに軟部組織ごと大結節骨片を結わい付けるのです。


大結節骨折の手術では、鋼線締結法を施行されるケースが多いです。両者を比較した場合、手技の簡便さや固定性を考えるとPhilos plateよりも鋼線締結法に軍配が上がると思いました。




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