昨日の午後は、橈骨遠位端骨折後に併発した長母指伸筋腱(EPL)の皮下断裂に対する手術でした。この方は4日前に転倒して橈骨遠位端骨折を受傷し、2日前から母指の伸展力不足に気付きました。


橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱皮下断裂は、300例に1例程度の頻度で発症するといわれています。断裂時期は40%が受傷後4週間以内、75%が受傷後8週間以内です。


発生機序は、リスター結節と伸筋支帯遠位部の間のインピンジメントによる機械的要因説、血行不全説、複合要因説に分けられます。


この方は、術前にエコーで確認するとリスター結節部で断裂していました。術中所見も同部位で断裂しており、腱断端は両側とも著明に変性しており、約2cm程度の長さにわたって不整でした。


治療は、固有示指伸筋腱を用いた腱移行術が一般的です。EPLは断裂部を中心に比較的広範囲に変性しているため、端々縫合は物理的に難しい場合が多いのです。


腱縫合の緊張度は、母指を軽度外転してグリップし、手関節軽度背屈位の状態で縫合します。橈骨遠位端骨折後のリハビリテーション中に長母指伸筋腱皮下断裂を併発することが多いので注意が必要です。



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