静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その1
 のつづきです。


VTEの予防法は、下記のごとくです。

 


弾性ストッキングまたは弾性包帯

血栓の発生は術中から始まっているので、手術中から使用開始します。下肢を圧迫することで表在静脈に流れる血液を減少させて、深部静脈の血流量を増やし、血栓形成を抑えます。一般的な日常生活に近い程度の歩行を行えるようになるまで、24時間装着します。閉塞性動脈硬化症の症例では注意が必要です。

 

間欠的空気圧迫法(foot pump)

足底部の静脈は、自動・他動運動や歩行の際の加圧によって、強力で自然な血液ポンプとして機能しています。術中・術後は、こういった運動が不可能なため、手術中よりフットポンプを用い、足底部を反復的に圧迫することにより、足底部からの静脈血流を保つことでDVTの予防をしています。閉塞性動脈硬化症の症例では注意が必要です。また、既に下肢に静脈血栓が生じていることが分かっている際には、間欠的空気圧迫法で既に生じている血栓を遊離させてPTEを生じさせる可能性と、既に生じている血栓を大きくしない予防効果の両方が考えられており、一定の見解には至っていません。

 

足関節自動運動

 手術直後から足関節の自動運動を促し、翌日からは理学療法士によるリハビリテーションが始まります。これにより、下肢血流停滞が予防されます。

 

術後の体位

臥床している期間は、下肢を挙上することで術後DVTの発生頻度が低下するという報告があるので一般的には下肢を約20度挙上させます。

 

薬物療法

低分子量ヘパリンを術後24~36時間後に手術創などからの出血がないことを確認してから投与開始します。施行期間は10-14日間の投与で日本人におけるエビデンスを得ています。

 

 

いずれも当たり前のことですが、予防効果を得られる機序について再認識しました。

 

 

ただ、③の術後体位で下肢を約20度挙上することは、THA・TKAとも関節の拘縮を作ってしまうで、少なくとも術後数日に留めるべきなのでしょう。

 

静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE) その3 へつづく





日本整形外科学会静脈血栓塞栓症予防ガイドライン