先日の医局会で、病院食のことが議題に上りました。
私が勤務する病院は私立病院なので、経営面を考えることが多いです。
このため病院の方針として食事は可能な限り、治療食を選択するようにしています。これ自体は何ら問題無いことだと思っていましたが、患者さんから病院食に関する意見がありました。
曰、病院食が非常にマズイとのことです・・・。特に高脂血症に対する食事の評判が良くありません。常食の患者さんとの食事の美味しさに差があり過ぎるようです。
これは意外な盲点でした。私も当直の際に検食をいただきますが、一度もマズイと思ったことはありません。しかし、これは当直医に出される検食が、常食だったためのようです。
入院中は、生活が制限されるため患者さんのストレスは溜まりがちです。その中で食事は唯一(?)の楽しみとなっている患者さんも多いでしょう。
その唯一の楽しみである食事がマズイようでは、病院の評判に関わります。特に人工関節をウリにしている病院では反対側も手術が必要な患者さんが多いです。
「食事がマズイから反対側の手術をこの病院では受けたくない」という患者さんまで出てくるようでは、それこそ病院経営の根幹に関わる事態です。
確かに競争の激しい産科病院では病室や食事は贅を尽くしています。以前、地方の公立病院に勤めていた際、私立産科病院と比べて病室や食事がダメなので閑古鳥が鳴いていました。
たかが食事、されど食事です。今回の医局会では、治療食と美味しさの兼ね合いで貧血食がベストチョイスという結論になりました。貧血食は常食にプラスアルファで副食が付くからです。
このように、医療サイドからは盲点になるようなことが患者さんは多々あるようです。この意味で、患者さんへのアンケートやヒアリングは重要だと改めて認識しました。
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人工股関節全置換術
食事
整形外科の勤務医をしていると、大腿骨近位部骨折の治療はほぼ必須と言ってよいでしょう。治療のメインはやはり手術ですが、もちろんリハビリテーションや骨粗鬆症の治療も重要です。
しかし、実はそれだけでは患者さんの生活が完全に回復しないことが多いです。というのは、このような骨折は認知症に付随して発生することが多いからです。
骨折や骨粗鬆症を治療しても認知症が残存するケースがほとんどです。この場合、特に1人暮らしの患者さんが退院して元の生活に戻っても、再骨折して病院に舞い戻ってきがちです。
このようなケースでは、1人暮らしを続けざるを得ない等の個々の家庭の事情があるため、私たち整形外科医が患者さんにしてあげられることは多くないのが実情です。
しかし、ある程度までの認知症なら1人暮らしも続けられる可能性があります。認知症患者さんが、1人暮らしを続けるためには下記の3つの確保が重要となります。
1. 食事
2. 見守り
3. 移動手段
食事は、多くの会社が宅配食サービスに参入しているため種類も豊富にそろっています。近くにコンビニエンスストアがあれば便利ですし、通所介護に通えばそこで食事を取ることができます。
見守りは、地域のネットワークに加えて、警備会社のホームセキュリティサービスや、家電に搭載された見守り機能などの利用可能です。
移動手段に関しては、まだ課題が多いのが現状です。認知症になると運転免許証の返納を求められますし、地方では公共交通機関が貧弱な地域も多いです。
このように最大のネックは、地方在住の認知症患者さんの移動手段確保ですが、昔に比べたら地域差はあるものの、1人暮らしを続けられる最低限の条件は整い安くなりました。
食事以外の家事支援なら、公的介護保険サービスの訪問介護でヘルパーに頼んだり、割高ではあるものの民間の家事代行サービスを利用可能です。
退院調整にあたって、上記の3つの事項(食事・見守り・移動手段)の確保を考えて介護保険の主治医意見書を記載したり、家人やケアマネージャーさんと調整すると良いと思います。
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整形外科研修ノート (研修ノートシリーズ)
日本リウマチ学会が発行しているニュースレター(2014.12月号)に興味深い記事がありました。
滋賀医科大学の川崎先生が執筆された「関節リウマチと食事」です。
関節リウマチ患者さんから「リウマチにいい食べ物は何ですか?」と訊かれる機会があると思います。医師サイドからすると、食べ物にこだわりは無いので適当に答えてしまいがちです。
しかし、患者さんサイドからすると、少しでも病気がよくなる食べ物を具体的に知りたいので、怪しげな健康食品やサプリメントに引っ掛かってしまう方が多いです。
食事と関節リウマチの関係について、何かエビデンスは無いのか?という疑問に答えるべく、川崎先生が下記のようなまとめをされていました。
・ 関節リウマチと食事の関連には「発症因子としての食事」と「治療法としての食事」がある。
・ 発症の防御因子は、魚・オリーブオイル・果物・野菜・アルコール・EPAやDHA
・ 発症の危険因子は、肉・コーヒー・砂糖入り炭酸飲料
・ 治療法としての食事では、エビデンスのある疫学調査はほとんどない
・ EPAやDHA には抗炎症作用があり、発症の防御因子だけでなく臨床症状の改善効果もある
以上をまとめると、関節リウマチの治療はあくまでも薬物治療が主であることを理解していただいた上で、「肉ではなく青魚を摂りましょう」と説明することを推奨されています。
川崎先生は、「肉ではなく青魚を摂ることは、生活習慣病予防やアンチエイジングにもつながり一石二鳥となるかもしれません」 と上手に結ばれていました。なかなか参考になりますね。
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