整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

骨折

脛腓間スクリューの抜釘時期


足関節脱臼骨折では、Lauge-Hansen分類が有名です。この分類のPEでは、脛腓骨間の下腿骨間膜が断裂しているため、脛腓間スクリュー(positioning screw)が必須です。


脛腓間スクリューを使用する目的は、断裂した下腿骨間膜の修復ですが、最も重要なことは遠位脛腓靭帯の解剖学的修復です。靭帯が修復されるまでスクリューは必須です。


それでは、脛腓間スクリューを抜釘する時期はいつごろがよいのでしょうか?荷重歩行によって、脛腓間スクリューが破損する可能性は約30%と高率です。


スクリューの破損を恐れていると、いつまで経っても荷重歩行を開始できません。そうなると骨萎縮や関節拘縮が進行して足関節機能が低下します。


脛腓間スクリューを抜釘する時期を考える上で、何を最優先させるかがポイントになります。やはり最優先は、遠位脛腓靭帯および下腿骨間膜の解剖学的修復です。


遠位脛腓靭帯および下腿骨間膜破損が、再度破綻しないようにするためには、最低でも3ヵ月経過してから脛腓間スクリューを抜釘するのがよいといわれています。


手術後1~2ヵ月では、脛腓間の靭帯構造が再度破綻する可能性があるからです。もちろん、脛腓間スクリューを留置したまま荷重歩行を開始するので、折損リスクが高まります。


しかし、遠位脛腓靭帯および下腿骨間膜の解剖学的修復が最優先課題なので、脛腓間固定スクリューが折損するリスクには、ある程度目をつぶるしかないのが現実です。





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陳旧性(?)小児肘内障には要注意!


先日、近所の整形外科開業医から2歳児の診察依頼がありました。
前日、父親に左手を引っ張られてから動かさなくなったとのことです。


そして、当日の午前にその整形外科開業医を受診したのですが、肘内障の整復操作をしてもはっきりとした整復感を得ることができなかったようです。


当院初診時に、患児はある程度左肘を動かしていますが、まだ痛みが残存しているようです。両肘関節に視診上での差異が無いことを確認した上で、小児肘内障の整復操作を施行しました。


何度か繰り返すと、ようやく鈍いクリックを触知しましたがいつもと様子が違います。う~ん、何かおかしい・・・。念のため、もう少し継続すると今度は比較的はっきりしたクリックを触知しました。



城東整形外科の皆川先生の論文にもありましたが、一度肘内障を発症すると輪状靭帯や周囲の軟部組織が腫脹するそうです。


数時間以内に整復されている通常例でも軟部組織が腫脹するぐらいなので、1日経過したものでは相当輪状靭帯周囲が腫脹しているものと推察されます。


このためなかなか輪状靭帯が整復されず、整復操作も一度で完全には成功しなかったのでしょう。診断も含めて1日以上経過している小児肘内障は要注意だなと感じました。




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珍しい!第5中足骨基部骨折の手術


先日、第5中足骨基部骨折の手術がありました。
第5中足骨基部骨折の手術など、私の長いキャリア(?)の中でもほとんど記憶にありません。


ほとんどの症例は保存治療で充分に骨癒合を獲得できますが、今回の方は基部骨片が90度飜転していました。これでは骨癒合しそうにありません。


短腓骨筋腱に引っ張られての転位なのでしょうが、モロに皮下に骨片を触れていました。さすがに手術療法の適応だと思います。


手術のアプローチは、比較的容易です。皮膚を切開すると直下に基部骨片があります。ただし、固定方法は熟慮する必要があります。短腓骨筋腱による牽引が思いのほか強力だからです。


AOの教科書にはスクリューを1本挿入する方法や鋼線締結法が紹介されていますが、いすれもちょっと微妙な感じです。


スクリューのみの固定では固定力に問題があります。また鋼線締結包では短腓骨筋腱のマイクロモーションで鋼線が抜けてきそうな気がします。


結局、リングピンを用いての固定になりましたが、合うサイズがなかなかありません。ナカシマメディカルのリングピンは1本531円と安いのですが、第5中足骨には長すぎます。


他社製品では、かろうじてAimedic MMTのAI wiring systemは長さ40mmからありますが、1本10万円近くする(!)というシロモノです。


悩ましいですが、安全第一に考えてAimedic MMTのAI wiring systemになりました。ありふれた骨折ですが、ありふれた手術ではない第5中足骨基部骨折。少々難しいです。
 




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交通事故患者さんと医師の最適解は?


交通事故で整形外科外来を受診する患者さんは多いです。
しかし、外傷性頚部症候群の患者さんを診ることが嬉しい勤務医はあまり居ないと思います。


主観的な症状ばかりで、客観的な所見に乏しい患者さんがほとんどです。このため、詐病を疑うまではいかないものの、勤務医の立場からはちょっと勘弁してほしいと思ってしまいがちです。


勤務医の立場からは、受傷後1週間ぐらい経過しても明らかな神経学的異常所見や外傷の所見が無い患者さんは、できるだけ通院しないように仕向けるのが最適解です。


一方、交通事故患者さんの立場は全く異なります。自賠責や任意保険の入通院慰謝料には、通院期間および通院回数が大きな影響を及ぼします。特に通院回数は週2回以上が理想的です。


交通事故の患者さんが前回受診日から数日しか経過していないのに再診することがよくありますが、その理由はこの入通院慰謝料を考慮しての行動なのです。


私たちの立場では、症状が変わらないのに2日毎に受診されてはたまったものではありません。もちろん、患者さんも医師の厳しい視線を感じるので、2日毎に受診し続ける強者は少ないです。
 


しかし、充分な金額の入通院慰謝料を確保するためには、ある程度の通院回数が必須です。この結果として医師に顔を合わすことの無い物療に流れる患者さんが後を絶ちません。


このことが、交通事故患者さんが判で押したように物療を希望する理由です。更に交通事故患者を飯のタネにしている接骨院へ流れる患者さんが多いのも、このことが理由です。


何といっても、病院はできるだけ患者さんが再診しないように仕向ける一方で、接骨院は集患に熱心なので、交通事故患者さんが接骨院に流れるのは必定です。


しかし、ここで交通事故患者さんにとって大きな問題点が持ち上がります。後遺症診断書を作成できるのは医師だけなので、途中で接骨院に行っていた患者さんは極めて不利になります。


接骨院としては、通院回数を稼いだ後の交通事故患者さんのことなど知ったことではありません。一方、途中経過が全く不明な患者さんの後遺症診断書を作成するのは迷惑な話です。


医師も人間なので、このような患者さんとできるだけ関わらないようにします。このため、後遺症診断書作成を引き受ける場合でも、内容がシンプルで損保側を資する診断書になりがちです。


このように考えると、入通院慰謝料に目が眩んで接骨院に流れる行為は、より金額の大きな後遺障害慰謝料を捨ててしまう馬鹿げた行為ということになります。


では、もし自分が交通事故患者さんになったらどうすればよいかを考えてみました。私なら物療のある、比較的流行っていない開業医に通院すると思います。


さらに開業医の先生と仲良くなれば、後遺症診断書作成時にも何らかの便宜を図ってもらえるかもしれません。このように考えると、交通事故の最適解は開業医通院ということになりそうです。




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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

リハビリテーション目標の寸止め


大腿骨近位部骨折患者さんの術後リハビリテーションの目標設定は難しいことがあります。
骨折した高齢患者さんは、認知症を併発していることが多いからです。


目標設定が難しくなる理由は、認知症のためにうまく訓練できないためだけではありません。むしろ、家族や退院後の施設の要望で、リハビリテーションを中止することがあります。  


例えば徘徊する認知症患者さんの歩行能力を上げてしまうと、退院後の介護が非常に大変になるケースがあります。ちょっと目を離すとすぐに動き出すので転倒リスクも高まります。


高度の認知症患者さんでは、介護しているご家族から敢えて車椅子移乗レベルよりも上は目指さないで欲しい旨の要望をいただくことが多いです。


医療者としては、リハビリテーションでベストの身体能力を再獲得して欲しい。しかし、身体能力が向上すればするほど介護が難しくなる現実があります。これは、なかなか切実な問題です。


最初の頃は、私はこのような家族の意向に反感を抱いたものです。家族の都合で患者さんのADLを敢えて低いままにするとは何事だと・・・ 


御家族のことを何も分かっていない素人意見ですね。世間知らずとはまさにこのことです。介護という先の見えない戦いをしている御家族の状況が分かっていませんでした。


しかも、その戦いは、今日よりは明日の方が悪くなるという退却戦なのです。子育てのように今日よりも明日の方が成長していく状況とは全く真逆な状況です。


このような状況を理解すると、必然的に御家族の意向を尊重せざるを得ません。そして、この決断は、再骨折を防ぐという意味で、往々にして患者さんご本人のためにもなります。


全力で医療資源を投入して患者さんを回復させれば良いわけでもないのが、リハビリテーションの難しいところですね。コミュニケーションを密にとって御家族の意向を汲むことが重要です。




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