先日、90歳前半の高齢者が腰痛で救急搬送されました。通常ストレッチャーで搬送されますが、救急室に到着すると、すでに車椅子で座っていました。
それなりに痛みはあるようですが、単純X線像では特に異常所見を認めません。MRIでは亜急性の第9胸椎圧迫骨折を認めました。強い希望があったため、入院となりました。
ここまでは治療経過なのですが、入院翌日に外出希望がありました。独り暮らしで身寄りも無いため、忘れ物を取りに行きたいとのことでした。
認知症は無く独歩可能であったため、外出許可を出したのですが、その日の夕方に救急要請がありました。その患者さんが最寄駅で動けなくなって救急要請したとのことです。
外出時は歩行可能なのに、帰りに(しかも駅から)都合良く救急要請??? 案の定、腰痛の増悪は無く、すたすた歩いて救急室に乗り込んできました・・・
この患者さんは生活保護で、救急車をタクシー代わりに日常的に利用しているそうです。救急隊員も「いつものことです・・・」苦笑していました。
ここまで徹底して救急車をタクシー代わりに利用する人は珍しいですが、いくら御高齢の生活保護患者とはいえ、このようなモラルハザードは許されないのではないかと感じました。
骨折
「整形外科医のゆるいブログ」の中で興味深い記事があったのでご紹介します。仕事に必要なことは、全て印刷所の営業のひとが教えてくれた です。
昔に比べて手技書はわかり易いので一杯あって若い先生達は良いよね。 若い先生達が転職で民間病院に勤務することになったら是非やって貰いたいことがある。
病院の経費で医学書を買って貰えるように交渉するんだよ。 3,4年でその病院を辞めても、買って貰った医学書がどこにあるかなんか誰もチェックしていないでしょ。
医学書に金を掛けるか、ケチるかで全然理解の深さが違ってくる。 俺はケチだから、研修医の時に1冊買った以外自分の金で医学書を買ったことがないよ。
そして多くの本を熟読するのではなく、辞書代わりに使う。 自分の担当する骨折を手技書系をまず読んで。次にAOで全体を理解して、Campbellで医学用語を理解する。
そして実際の手術を行う。これを繰り返すことが、労力が少なく力量アップに繋がると思うよ。 一般的にはこの逆を勧められるけどね。(総論から各論)
残った時間で、副業もやりたいし、可愛い女性と遊びたいし、運動もしたいでしょ。 結婚していれば家事の手伝いと子供のお守りもやらないといけないでしょ。
大学受験と同じように全ての時間を勉強に投入系は、最後は幸せになれないように人生は出来ているんだって。 人生はゆるくね。
なるほど! と思ったことが2点あります。
- 病院の経費で医学書を購入する
- 各論 → 総論 → 実践 の繰り返し
①はなかなかいい感じですね。比較的長く勤務することが条件なのでしょうが、2年以上の勤務が見込まれるのであれば有効な方法だと思いました。
②は、まさに時間の有効利用のTIPSです。私は要領が悪いので、「AO法の実際」などを最初から最後まで一気に読破する系でしたが、今ならゆるい先生方式を選択すると思います。
人生は有限なので、いかに効率良く時間を使うかで最終的な幸福度が決まると思います。よい気付きを得たブログ記事でした。
整形外科を志すなら、キャンベル(Campbell's Operative Orthopaedics)は必須でしょう。ペーパー版以外にも、DVDやe-ditionもあって便利です。更にKindle版は約30% OFFで購入可能です。このような辞書的な医学書は、電子書籍と相性が良いと思います。
先日、橈骨遠位端骨折術後患者さんの掌側プレートを抜釘しました。初回手術から約1年経過しています。
かなり粉砕が高度であったため、初回手術では骨欠損部に人工骨(β-TCP)を多量に充填しました。かなりの骨欠損だったので、術後も恐る恐る診ていた記憶があります。
そして、約1年で抜釘術を施行しました。側面から観察すると、かなり人工骨が吸収されて
いますが、正面ではプレートが邪魔でいまいち分かりませんでした。
いよいよ抜釘して人工骨の状態の全容が解明されました。あれだけあった人工骨が約1年でかなり吸収されて自家骨に置換されていることが分かります。
この患者さんは70歳台後半の方で、骨粗鬆症がベースにあります。それにもかかわらず、橈骨遠位端骨折では、おどろくほど骨形成が盛んなようです。
今回の経験から、多少の骨欠損は問題無いことが分かりました。高度の骨粗鬆症症例は骨欠損が大きくなりがちですが、プレート固定をきっちりできれば恐れるに足りずのようです。
整形外科医なら誰もが所有している骨折治療のバイブルです。豊富な図や画像が提示されており、骨折手術におけるAOの考え方や基本原則を学べます。
先日、透析患者さんの橈骨遠位端骨折に対して掌側プレートを用いた手術を施行しました。幸い、非シャント側だったのですが、思わぬところで足をすくわれました。。。
普通にエスマルヒを巻いて、ターニケットを250mmHgに設定しました。いざ手術が始まると、皮膚切開の段階から結構な出血がありました。
上肢静脈内の血液をエスマルヒで十分に排除できていなかったのかな? と呑気に構えていましたが、方形回内筋を切離すると、筋肉内血管から動脈性出血があるではないですか!
えっ~と、ターニケットしてますよね、と確認しましたが、しっかり圧はかかっています。それにも関わらず動脈性の出血がありました。
動脈性出血もあるものの、メインは静脈血によるoozingです。10秒ぐらいで皮膚上に溢れるぐらい凄い勢いで出血しています。ターニケットは完全に鬱血帯になっているようです。
仕方なくターニケットを解除するとoogingはましになりましたが、動脈性の出血は止まりません(当たり前)。これはマズイなということで、急いでプレート固定を終了しました。
おそらく動脈硬化のために、いくら駆血圧を高くしても動脈腔が閉塞しないのでしょう。透析おそるべしです。
次への参考になることは何か無いかなと考えましたが、はっきりとした対策は思いつきません。透析歴の長い患者さんでは、できるだけ手術を回避することしか対策はなさそうです。
そうは言っても回避できない手術は多いです。そのような場合、透析患者さんでは動脈硬化のためにターニケットが役に立たない可能性があることを念頭に置く必要がありそうです。
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先日、大腿骨転子部骨折の患者さんの手術がありました。
普通の骨折型で、高齢者であること以外は特に全身状態も悪くありません。
ありふれた骨折ではあるものの、今回は非常に緊張感をもって手術に臨みました。その理由は患者さんの血型が、AB型のRhマイナスだったからです。。。
だいたい私は、高齢者の大腿骨転子部骨折では当日手術を心掛けています。このため、検査依頼と手術申し込みは同時進行が多いのですが、今回は血型でつまづきました。
血液センターからは、当日中の血液確保は難しいとの回答がありました。常識的に考えて術中に輸血せざるを得ない状況はめったにありません。
しかし、手術とは何が起こるか分からないモノです。退路の確保(この場合はMAP-CRCの確保)をせずに手術に臨むことは、危険な行為だと判断しました。
しばらくして血液センターから連絡があり、当日午後にAB型のRhマイナスの血液を確保できることになりました。
あ~、良かったと思って手術に臨みましたが、何故か緊張感がいつもと違います。AB型のRhマイナスは、意外なほどプレッシャーがありました。。。
まず無いとは思うものの、予想外に大出血して輸血が必要となった時に退路は無いです。そのような思いが頭の片隅にあるので、簡単な手術なのに汗をかきました。
ちょっと大袈裟かもしれませんが、ビルの上に架けた鉄骨の上を歩くような感覚なのかもしれません。う~ん、我ながらチキンですね(笑)。
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