整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

骨髄炎

慢性骨髄炎の手術戦略

このエントリーをはてなブックマークに追加


先日、大腿骨慢性骨髄炎の急性増悪の症例がありました。30年モノの骨髄炎なのですが、肺炎を契機にして再燃したようです。


MRIを撮像すると、大腿骨周囲に大量の膿をみとめました。大腿骨骨内の信号変化も著明です。明らかに骨髄炎の所見でした。


Spike feverだけではなく、血液生化学検査もエライ数字になったので、やむを得ず臨時手術を施行しました。大腿の膿瘍部を切開すると大量の膿が噴出しました。


内部も感染性組織でエライ状況です...。しかし、ある程度洗浄して膿を洗い流した後は、大腿骨骨髄炎部の掻爬を目指しました。周囲の軟部組織には見向きもしません。


大腿骨の表面はやや色調が悪いものの、外観上はそれなりの強度を保っていそうです。骨表面に極めて小さな瘻孔(?)を探し出しましたが、大量の膿の原因とは思い難いです。


しかし、感染の本丸は腐骨です。腐骨を切除しないかぎりは、いくら周囲の軟部組織を掻爬しても本丸を攻めたことにはなりません。


このため、手術時間の半分以上を腐骨掻爬に費やしました。サージアトームやケリソンで皮質骨(腐骨)を切除しながら、骨からの出血有無を確認するという地道な作業です。


結局、20mm×15mm×10mmの腐骨を切除しました。周囲の軟部組織は完全に感染性組織を除去したとは言い難いですが、血流のある組織は抗生剤含有セメントで感染制御可能です。


骨髄炎の手術では、全体の炎症度合いをみると周囲の軟部組織の所見の方が派手ですが、おおもとの原因となっている腐骨を完全に切除することに注力するべきだと思います。






★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

 
感染症治療で最もお勧めの書籍です。Grandeと小さいサイズがあり内容は同じです。小さいサイズの方が安いですが、常に携帯する医師を除けば見やすいGrandeがお勧めです。

骨髄炎範囲の把握はMRIが有効

このエントリーをはてなブックマークに追加

Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
骨髄炎が疑われる糖尿病にはMRIが有用」です。




北播磨総合医療センター形成外科の藤井美樹氏は,骨髄炎診断にはMRIが有用との知見を,第44回日本創傷治癒学会で報告した。


神経障害と感染症が主病因の場合,局在まで予測可能なケースも多いという。 糖尿病性足潰瘍にとって骨髄炎は,下肢切断率や抗生剤の投与期間に関わる重要な因子となる。


また,外科的治療,保存的治療のいずれで対処するにしても,壊死や感染組織などの範囲は大切な情報となるため,骨髄炎は有無だけでなく,局在の把握が求められている。  


現状では骨髄炎が疑われる糖尿病患者に対しては単純X線を行い,確認できないときにMRIを撮影することが推奨されている。


しかし、藤井氏は「X線は感染により破壊された骨を見ることしかできず,どこまで感染しているかを見ることができない」と指摘した。  


一方,MRIではT1強調像が高信号/脂肪抑制T2強調像が低信号ならば正常骨髄,
反対にT1強調像が低信号/脂肪抑制T2強調像が高信号ならば骨髄炎,
両画像がはっきりしない部分を骨髄浮腫と診断することができる。


同氏らは,術前のMRI診断と骨の病理標本の比較が可能だった糖尿病性足潰瘍28例(39趾,149骨)を神戸分類に基づき4つの病態に分類し(タイプⅠ神経障害性潰瘍,同Ⅱ重症下肢虚血,同Ⅲ感染症,同Ⅳ虚血+感染合併例),病態ごとのMRIの有用性を見た。  


その結果,虚血が関与しないタイプⅠとⅢは軟部組織感染症を含めて全55骨で術前MRIと病理所見が局在まで一致していた一方で,虚血メインのタイプⅡの症例では血行再建前後のMRIともに全例の診断ができなかった。


同氏は「虚血のみのタイプⅡはMRI撮影の意味は少ないが,タイプⅠおよびⅢは術前のMRIで骨髄炎の局在まで診断が可能であり,診断結果に基づいて軟部組織感染を制御しながら治療を行うことができる」と述べた。





整形外科医にとっては何となく常識的な気がするのですが、改めて指摘されると確かに骨髄炎症例の感染範囲の把握にはMRIが有効です。


ただし、足部の糖尿病性壊疽に関しては局所を掻破するというよりも、現実的には「どの高位で切断するか」が問題となってきます。


そして、解剖学的な特徴から、切断高位は ① 足趾切断 ② 前側部切断 ③ 下腿切断 ④ 大腿切断 のいずれかになると思います。


したがって足部の壊疽でMRIを撮像する臨床的意味はあまり高くないと思われます。しかし、形成外科では血行再建も治療の選択枝となるため、このような発想が出てきたのだと思います。


私は、足部糖尿病性壊疽でMRIを施行するつもりは無いですが、脛骨骨髄炎などでは掻破範囲の把握にMRIは有用だと考えています。過剰医療にならない範囲でMRIを利用しようと思います。




 ★★ 『 整形外科の歩き方 』でお宝アルバイト獲得のための
基本講座を公開中です! ★★


      





患者さんへの感情移入は控えめに・・・

このエントリーをはてなブックマークに追加


現在、骨髄炎の治療で難渋している方が居ます。この方には何度か掻爬洗浄術+抗生剤含有セメントビーズ留置術を施行していますが、未だに感染の鎮静化を得られていません。


まだ若くて一家の大黒柱なので早く社会復帰してもらいたいのですが、あと一歩のところで感染の鎮静化が得られないのです。肉眼的な術中所見では明らかな感染徴候を認めなくなりました。


しかし、術中培養でどうしても細菌が検出されるのです。この方は腐骨部に巨大な骨欠損があるので、最終的には感染を制御できた段階で自家骨移植をする必要があります。


この方の”早く社会復帰しなければ”という焦りが、私にも手に取るように分かります。最終的に自家骨移植を施行する時期は私が判断するので、この方の人生を背負っていることが辛いです。


辛さに負けて判断が甘くなりがちですが、ここはぐっと我慢だなと思っています。初回手術は他院なのでまだ気持ちは楽ですが、夜に自宅でくついでいるときにも思い出して悩むことがあります。


しかし、考え過ぎて患者さんに感情移入し過ぎると、自分も辛くなるので治療判断を誤る原因となります。これを防ぐには、少しドライになることも必要だなと最近思うようになりました。


辛い状況であっても客観的に冷静に判断を下すことは、なかなか難しい場合が多いです。しかし、それができることもドクターに要求される資質のひとつかなと思いました。



       ★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

 
  初学者が整形外科の外来や救急業務を遂行するにあたり、最もお勧めの書籍です


                   
    

          
          整形外科研修ノート (研修ノートシリーズ)


急げ、ドレナージ!感染は時間との闘い

このエントリーをはてなブックマークに追加

昨日の午前のことですが、海外で脛骨遠位端開放骨折に対して骨接合術および人工骨移植術を受けて、私が抜釘術を行った方が紹介状を携えてひょっこりと外来受診されました。


遠方に出張中だったようですが、月曜日から創部の腫脹と発赤が出現しました。近医を受診して抗生剤を処方されて、水曜日に帰宅とともに当院を受診したそうです。


診察すると下腿前方の術創周囲の腫脹・発赤・圧痛がありました。血液生化学データでもCRP/WBCが上昇していました。緊急MRIを施行したところ、骨折部にFat suppressionで高輝度領域を認めました。


冠状断を脛骨末梢に追っていくと、皮下膿瘍は腐骨および感染性組織に置き換わっていると思われる骨折部の一部に接していました。明らかに脛骨骨髄炎を併発しているようです。


しかし骨折部周囲の骨組織の信号強度は正常だったので、まだ感染は骨折部に限局していそうな印象でした。しかし局所所見ではかなり炎症が強そうなので、周囲の正常な骨組織に感染が波及するのも時間の問題だろうと思いました。


昔、オーベンの先生に言われたことを思い出しました。「握ってから6時間常温で放置した寿司は食べたくないだろう?感染もそれと同じで、発生したらすぐにドレナージするべきだ。」


まずは皮下膿瘍のドレナージが先決なので、局麻下に手術を施行する方向で患者さんと話し合いました。この方は腹の座った方で急な手術にも臆することなく、むしろ一期的な骨髄炎手術も厭わないとおっしゃられました。


こう言われると私としてもその想いに応える必要があります。当日手術も可能な施設なので、午後から骨髄炎手術を急遽敢行することになりました。術前プランニングをする時間的余裕は30分程度しか無かったのですが、MRIと単純X線像で膿瘍と腐骨の範囲を頭に叩き込んで手術に臨みました。


皮下膿瘍を掻爬してから、骨折部の腐骨と人工骨の掻爬に取り掛かりました。腐骨の範囲はほぼMRIどおりで、かなり大きな骨欠損が生じました。最終的な掻爬範囲の判断は、ターニケットを外して骨髄からの出血を認める部位までとしました。


死腔に抗生剤含有骨セメントを充填して手術を終了しました。できることは全てやり尽くしたので、あとは何とか骨髄炎が鎮静化してくれるのを祈るのみです・・・。




       ★★★  管理人 お勧めの医学書  ★★★

       
       総論   (診察・診断、治療全般、骨折・外傷、周術期管理)
 

       各論   (手の外科、肩関節、脊椎、股関節、膝関節、足の外科、腫瘍)

       その他 (関節リウマチ、痛風・高尿酸血症、骨粗鬆症、専門医試験)



アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

医療研究を身近な存在とし、医療の未来を作る


管理人の著書

161228 【書影】医師の経済的自由
管理人によるケアネット連載コラム
log_carenet

医師のためのお金の話

管理人による m3.com 連載コラム
管理人も参加しているオンラインサロン
勤務医のための資産形成マニュアル
築古木造戸建投資マニュアル

医師のための築古木造戸建投資マニュアル 1
REITで実践する不動産投資セミナー
190122
医師のための 金融資産形成術


配送無料! 医学書 購入サイト
プロフィール

自由気ままな整形外科医

・医学博士
・日本整形外科学会専門医
・日本リウマチ学会専門医
・不動産投資家
・超長期金融資産投資家
・ビジネスオーナー
・宅地建物取引主任士

QRコード
QRコード
記事検索
メッセージ
免責事項
免責事項に関して明示することで、当ブログの利用者は以下の事項に同意した上で利用しているものと考えます。 ここに書かれる意見には管理者のバイアスがかかっています。 利用者が当ブログに掲載されている情報を利用した際に生じた損害等について、当ブログの管理者は一切の責任を負いません。 また、当ブログの情報は、あくまでも目安としてご利用いただくものであり、医療行為は自己責任で行ってください。 また、当ブログは医療関係者を対象にしています。それ以外の方が、当ブログの情報から自己判断することは極めて危険な行為です。 必ず医療機関を受診して専門医の診察を受けてください。 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更する場合があります。