先日、13歳の脛腓骨骨折の方が入院されました。
サッカー中に相手と接触して受傷されたようで、単純X線像では螺旋骨折を認めました。
成人であれば術式で迷うことは無いのですが、単純X線像で骨端線が残っているため検討を要する症例です。ちょうど遠位骨幹端よりも約2cm中枢まで骨折線が及んでいます。
しばらく単純X線像を見ながら検討した結果、今回は骨幹端よりも中枢側のみロッキングプレートで骨接合術することにしました。偽関節が嫌なので、まずはMIPOでトライしようと思います。
背側凸の変形があるため前方からintrafocal pinningで整復・仮固定してから、骨折部を展開せずにロッキングプレートで固定する予定です。
このような症例では骨膜が破綻しているので、骨折部を展開するとあっと言う間に全長に渡って骨折部が露出してしまいます。骨折部の血流温存のためにも可能な限り展開しないつもりです。
もちろん、全く整復位を獲得できなければ、骨折部を展開せざるを得ないですが、まずはintrafocal pinningで整復を行い、年内最終手術を締めくくりたいと考えています。
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髄内釘
昨日の午後は上腕骨近位端骨折に対する骨折観血的手術でした。
3 part骨折だったので髄内釘ではなく、ロッキングプレートを使用しました。
今回は日本MDM社が販売している、ORTHO DEVELOPMENT社の
MODE Proximal Humeral Plate Systemを使用しました。
ORTHO DEVELOPMENT社のMODEシリーズはデバイスの使い安さがウリで、
今回のシステムでも、”デプスロッド”というロッド状のデプスゲージが使用可能でした。
さて上腕骨近位端骨折ですが、一般的に肩関節周囲の筋群の影響で、
近位骨片は骨幹部骨片に対して外側に転位しているケースが多いです。
髄内釘の場合、ガイドワイヤーさえ刺入できれば髄内釘を挿入することで、近位骨片と骨幹部骨片との転位は自然に整復されます。しかし、プレートの場合には自然整復を期待できません。
近位骨片の骨幹部に対する外側への転位は、プレートではローマン骨保持器を用いて整復します。皮質骨スクリューのみで整復する方も居るようですが手技が難しいと思います。
上腕骨骨幹部とプレートをローマン骨保持器で把持・整復することで、
上腕骨近位骨片の外側への転位もプレートによるバットレス効果で整復されます。
この際のコツは、「ローマン鉤をできるだけ上腕骨骨幹部骨片の中枢側に挿入すること」です。
骨折部に近ければ近いほどバットレス効果が高まり整復が容易になります。
しかし、上腕骨骨幹部の内側には広背筋や大円筋などの筋肉が停止しているため、
ローマン鉤の先を上腕骨骨幹部内側に挿入しにくいです。
これをクリアするためにはエレバトリウムや電気メスで、
これらの筋群の上腕骨骨幹部への停止部を開窓する必要があります。
どうしてもブラインドになるため指先で場所を確認しながらの手技になりますが、上腕骨近位骨片の整復をスムーズにできるか否かは、この操作の出来にかかっていると思います。
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昨日の午後は上腕骨近位端骨折に対する髄内釘でした。
単純X線像上、上腕骨頭が腱板に牽引されて骨幹部と全く連続性がありませんでした。
2 part骨折(外科頚骨折)の場合は、私は手技が簡単なので髄内釘を選択しています。しかし髄内釘の問題点として、エントリーポイントが外側の大結節寄りになりがちなことです。
髄内釘のエントリーポイントを至適にするためには、転位した上腕骨頭を整復する必要があります。私は2.4 K-wireを肩峰外側から上腕骨頭に2本刺入して、これをjoy-stickにして整復します。
まず、1本目の2.4 K-wireを肩峰下に沿ってできるだけ上腕骨頭内側に進めます。この際、どうしても肩峰の外側が邪魔になるのですが、ある程度仕方ありません。
1本目の2.4 K-wireをできるだけ上腕骨頭内側に刺入して、これをjoy-stickにして整復します。しかし1本では整復力が弱いので2本目を刺入して、更に強力に整復を行います。
2本のK-wireをjoy-stickにして思いっきり整復します。上腕骨頭を内転位に保ちながら、上腕骨頭の頂点からガイドワイヤーを刺入します。
K-wireで上腕骨頭を内転位に整復位を保っておかないと腱板に牽引されて外転転位してしまい、髄内釘のエントリーポイントがかなり大結節寄りになってしまいます。
髄内釘のエントリーポイントが大結節寄りになりすぎると、ネイル挿入時に骨折を併発したり、髄内釘の固定力が落ちるので注意が必要です。この手術で一番重要なポイントだと思います。
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昨日の午後はアルバイト先で、人工骨頭置換術の手術に参加しました。
当初、大腿骨転子部骨折に対して髄内釘で骨接合術を施行されたようです。
しかし、小転子下に及ぶ粉砕した大腿骨転子部骨折であったため頚基部が偽関節となりました。ラグスクリューがカットアウトしそうになったため、人工骨頭置換術を施行することになりました。
この方は80歳台後半の方で、高度の骨粗鬆症を併発しています。このため展開は広い視野を確保できる後外側アプローチを選択しました。
前回手術の皮切の一部を利用して髄内釘を抜去した後、慎重に股関節を展開しました。大腿骨近位部は、骨折の影響で正常な形態をほとんど留めていませんでした。
初回手術から3ヵ月経過していましたが、大腿骨周囲の瘢痕組織形成が高度でした。大腿骨近位部の形状を確認するため、骨膜下に瘢痕組織の切除を施行しました。
多量の瘢痕組織を切除すると何とか大腿骨近位部の形状を確認できました。ここで問題点がひとつ出てきました。髄内釘周囲の骨が硬化しており、大腿骨髄内の方向が分からないのです。
K-wireや鋭匙等で大腿骨髄内を探り、硬化した骨に穴を開けて何とかリーミングすることができました。ステムをラスピングする段階で、ふたつめの問題点が出てきました。
短縮した大腿骨の引き降ろしおよび術野の確保のため、後方軟部組織をかなり切除しています。このため、股関節の後方不安定性が通常症例よりも高度なのです。
しかし大腿骨近位部の骨欠損が大きいため、充分なトライアルができません。したがって、大腿骨頚部前捻角を通常よりもやや大きめにつけてラスピングしました。
何とか、無事手術を終了しましたが、やはりこのような症例での人工骨頭置換術は難しいと思いました。もう一度、手術の際に気付いた点をまとめておきます。
① 大腿骨近位部が硬化しており、リーミングのエントリーポイントの位置決めが難しい
② 外傷後なので軟部組織の弾性が低下している
③ 後方アプローチの場合、後方不安定性が強くなるためステム前捻角は大きめの方が無難
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今日の午前は、第5中手骨頚部骨折(=ボクサー骨折)に対する経皮的骨接合術を施行しました。今回は意外なほど手術に手こずってしまいました・・・。術式は経皮的な髄内釘です。
まず、第5中手骨基部背側に小切開を加えました。「筋鉤をお願いします」と言ったところ、「エッ、筋鉤ですか???」という手術室看護師さんの一言からコケてしまいました。
私の中では経皮的な髄内釘だったのですが、手術伝票に”経皮的骨接合術”と記載していたため、手術室的には通常の経皮的骨接合術(=pinning)だったようです。
気を取り直して手術を再開しましたが、上手くC-wireが末梢に進みません。透視下に確認するとエントリーポイントが若干末梢側でした・・・。5mm程度の差ですがうまく髄内に刺入できません。
なんだかんだと30分ほどかかって手術を終了しました。今回の反省点は下記のごとくです。
・ 手術室には、通常のpinningではなく、経皮的な髄内釘手術であることをはっきり伝える。
・ エントリーポイントは、できるだけ中枢側(CM関節に近接)で
・ C-wireは頑張らずに.1.0mm前後×2本の刺入でOK
いつまで経っても反省点がでてくるものです。
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