先日、高度円背の高齢者の大腿骨転子部骨折に対する骨折観血的手術がありました。
術中に仰臥位で牽引すると、ほぼ坐位になってしまうほどの円背です。


このような症例では体位設定の際に、ひとつのピットフォールがあることに気付きました。高度の円背を有する症例では骨盤が後傾しています。


このような骨盤後傾は、脊椎を前屈することである程度緩和されます。しかし、高度の円背がある場合には、坐位になるほどの体位にしてもまだ骨盤後傾を打ち消せないことがあります。


骨盤後傾を残したまま下肢を牽引すると、下図のように大腿骨骨折部に腹側凸の変形をきたしてしまいます。このまま骨接合すると大腿骨近位部の変形治癒が残存します。


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大腿骨近位の腹側凸変形を回避するためには下肢をやや上方に牽引する必要があります。この際の目安として、健側の股関節の伸展角度を参考にします。



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多くの症例では、股関節を最大伸展位にしても手術台に対して10度以上屈曲しています。健側股関節の可動域に、患側も揃えてあげることを目標にすることが妥当だと思います。




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