先日、外来で脊椎圧迫骨折のフォローをしている患者さんから、最近胸焼けがするという訴えをききました。
この患者さんは、骨粗鬆症が高度のためにいくつかの脊椎に圧迫骨折を併発しています。見た目にも円背なのですが、脊椎アライメントは明らかに正常ではありません。
このような脊椎圧迫骨折のためにアライメントが変わってしまった患者さんには、ときどき腹部症状が出ることがあります。
代表的なものは、逆流性食道炎と失禁です。逆流性食道炎は円背のために腹腔容積が減少して腹圧が高まりまるために併発します。
一方、失禁に関しては腹腔容積が減少して膀胱内圧が高まるために併発します。いずれも対症療法となるので、脊椎アライメントを壊さないようにすることが重要なのでしょう。
円背そのものを治療する手段は無いので、逆流性食道炎の治療は、酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)、またはヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)投与です。
PPIやH2ブロッカー投与以外にも生活習慣の改善が推奨がされています。生活習慣の改善項目は下記のごとくです。
- 脂っこいものや刺激の強いものを摂りすぎない
- 食べ過ぎに注意する
- 食べてすぐに横にならない
- 寝るときに少し上半身を高くして寝る
- お腹をしめつけない姿勢を心掛ける
- 禁煙する
しかし、薬物療法や生活習慣の改善を行っても、円背のため逆流性食道炎の完治は難しいです。やはり円背を作らないことが重要で、骨粗鬆症の治療の必要性を改めて感じました。
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。