昨日の外来で、Hbe抗原陽性およびHBV-DNAが基準値以上で検出されたB型肝炎の関節リウマチの患者さんに、MTX投与を開始するにあたって核酸アナログ製剤のエンテカビル(商品名:バラクルード)を処方開始しました。
バラクルードの薬価は、1錠あたり1032.3円もします!毎日服用するので、1ヵ月で3割負担の方では1万円近くかかる計算です・・・。これで生物学的製剤まで投与すると大変なことになってしまいますね。
しかし、日本肝臓学会のガイドラインなので、単なるリウマチ医が無視するわけにもいかず仕方なく投与開始しました。しかもガイドラインによるとHBV-DNA定量検査を1~3ヶ月に一度施行する必要があります。
結構キツイ縛りですが、患者さんと自分自身の身を守るためには仕方ありません。これだけの負担をしてもらって治療を開始するので、せめて関節リウマチの疾患活動性をしっかりコントロールしたいと思っています。
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HBV-DNA定量
月曜日に外来で関節リウマチの方を診察しました。
この方は関節リウマチの新分類基準を満たしていたため、MTXを開始しようと思っていました。
ところが前回の採血結果でHBs抗原が陽性でした。HBs抗体が陽性の方は結構よくみかけますが、HBs抗原が陽性の方はあまりみたことがありませんでした。
de novo B型肝炎のガイドラインを片手に、HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA定量を追加依頼していたのです。その結果が返ってきたのですが、HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA定量のいずれも基準値以下でした。
HBe抗原が陽性の場合には劇症肝炎を併発しやすいので、ガイドライン上も核酸アナログ製剤(エンテカビル; バラクルード等)投与が必要です。幸い基準値以下だったので、このまま月1回程度のHBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA定量測定で経過観察しようと思います。
しかし、ガイドラインのフローチャートをよく見ると、HBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA定量が基準値以下の場合の対応法が載っていないのです!普通に考えれば月1回のHBe抗原・HBe抗体・HBV-DNA定量フォローで問題ないはずですが・・・。
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最近、関節リウマチの初診の方で、HBs抗体陽性の方が多いです。日本肝臓学会が『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン 』を作成してから非常に外来での手間が煩雑になりました。B型肝炎訴訟に懲りた国がガイドライン作成を促したようです。
このガイドラインによるとHBs抗体陽性であれば、全例でHBV-DNA定量(=血中のウイルス量)を測定することを推奨(半ば強制ですね・・・)しています。実際、HBs抗体陽性の方は結構多いので、かなりの数の方のHBV-DNA定量を毎月(!)測定することになります。
感覚的には医療費の無駄使いに思えるのですが、万が一にもde novo B型肝炎を併発して訴訟に発展したときのことを考えると、ガイドラインに謳われている現状では施行せざる得ません。これは訴訟を怖れる国と製薬会社が、声を上げることのできない国民(健康保険料を支払っている)にツケ回ししている構図です。
先日も大阪大学付属病院でリツキシマブ投与中の方にde novo B型肝炎を併発した事案が訴訟になったというニュースがありました。もちろん、化学療法中にHBV-DNA定量は測定されていたようですが、毎月測定していなかったため訴えられたようです・・・。
遺族の気持ちも分からないことはないですが、このような訴訟が頻発すると医療サイドも萎縮してしまい、本来救えるはずの命が救えなくなってしまいます。アメリカのような訴訟社会にならないことを切に祈るばかりです。
※ 私の運営するホームページから、『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』 をダウンロードできます。
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