今日の午後は、出張先の病院で救急当番でした。91歳男性が正午ごろにしゃがんだ瞬間から、突然右下肢全体のしびれ・疼痛・冷感を訴えて救急搬送されました。


救急隊は症状から大腿骨頚部骨折を疑っていたようで、整形外科対応ということで搬送になりました。しかし、この手の血管系のイベントが発生しているときには、骨折とは違う独特の重篤感があります。


今回の方は、疼痛・膝窩動脈は触知可能・足背動脈は触知不能・TA以下の運動障害・下腿より末梢の知覚低下・下腿より末梢のチアノーゼ(いわゆる5P)だったので、下腿レベルでの動脈閉塞が予想されました。ちなみに足部静脈の虚脱は認めませんでしたが、これは迂回路からの血流があるためと考えています。


まず、採血して血中CPK、WBCの上昇の確認や、下肢動脈のCTAを施行する必要がありますが、IVRを施行可能な血管外科医・循環器内科医・放射線科医が不在の病院のため転送することになりました。


もちろん、高齢であることや膝窩動脈よりも末梢レベルの病変なので、今回のイベントに対するIVRは施行されない可能性が高いと思います。しかし、塞栓症の原因治療は専門医に任せるべきとの判断で転送しました。


下肢急性動脈閉塞症は、下肢の疼痛が主訴のため整形外科医が初療にあたることがあります。救急の現場では、血管系のイベントの可能性を常に念頭においておく必要があることを再認識しました。