日整会誌89(7)2015の514-522に掲載されていた「ロッキングプレート」の共育研修講座を拝読して非常に参考になりました。著者は岡山大学の野田知之先生です。
周知のようにロッキングプレートの普及は、2000年台前半のlocking copression plate(LCP)の開発・導入によってなされました。
ロッキングプレートは、下記のような利点があります。
1. 角度安定性
2. 架橋プレートとしての有用性
3. 完全なベンディング不要、骨膜性血行温存
4. periprosthetic fractureに対する有用性
①は、複数のスクリューとプレートが一体化することで、良好な初期固定性と高いアライメント維持能力を発揮します。特に骨端部分に対する固定力は従来法に比べて大幅に向上しました。
②③は、MIPO法との併用により、粉砕骨折に対する骨膜性血行温存に適した固定法です。プレートが骨に接触する必要が無いため、完全なベンディングは不要です。
一方、ロッキングプレートのピットフォールは下記のごとくです。
1. ロッキングスクリューの誤挿入
2. malalignmentなどの整復不良およびインプラント設置不良
3. 固定概念の誤り
4. 早期全荷重などコンプライアンスの悪い患者による不具合
5. 関節内スクリュー穿破
6. 遷延癒合・偽関節、インプラント折損
7. 軟部組織損傷
8. 抜釘困難
②は従来法と異なり、ロッキングプレート固定前にほぼ整復位を獲得しておく必要があります。従来法のように 「 固定しながら整復していく 」 ことができません。
③は、単純横骨折や短斜骨折に対する相対的固定は1ヵ所しかない骨折部に動きが集中するため容易に相対的固定を通り越して不安定になります。
更に、単純骨折で骨片間にギャップがある場合、従来プレートに比べて高いアライメント維持能力が仇になって長期間ギャップが維持されるため、遷延癒合や偽関節のリスクが高まります。
④は、高い初期固定性があるからといって髄内釘と同等の早期荷重は許容されません。早期全荷重は、スクリューと骨間の緩みによる偽関節・インプラント折損・骨破壊の原因になります。
私の中では、とくに③と④が参考になりました。ついついロッキングプレートを過大評価してしまいがちですが、固定概念を理解した上で適切な選択を行う必要がありますね。
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AO法骨折治療
LCP
今日の午後の手術は、大腿骨顆上骨折でした。大腿骨顆上骨折は、大腿骨頚部骨折と比べて解剖学的に良好な固定性を期待できないため難易度が高い骨折だと思います。
シンセスのロッキングプレートが登場するまでは、逆行性髄内釘ぐらいしか無かったため、あまり良好な治療成績を見込めませんでした。ロッキングプレートは革命的な内固定材料なのです。
現時点ではロッキングプレートが大腿骨顆上骨折の第一選択の内固定材料だと思います。実際の手術手技ですが、牽引手術台を使用する方法としない方法に分けることができます。
私は、手技が容易なので牽引手術台を使用することが多いです。さて、麻酔を導入した段階で牽引手術台に載せますが、この際にあらかじめ透視下にプレートの選択をします。
LCP DFは5穴から13穴までありますが、たいてい7穴前後のプレートを選択することになります。まず、プレートの入った箱ごと透視します。そして最適な長さのプレートを選択するのです。
更に、プレートを大腿骨外側に置いて正面から透視しながら、関節面・骨折部・プレート中枢端を皮膚上にマーキングします。側面像でも透視しておくと皮切の部位を間違えません。
術中の手技のポイントはこちらにまとめているので、ご参考にしてください。転位が高度な大腿骨顆部の粉砕骨折以外は、基本的に牽引手術台をお勧めします。
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