先日の外来で、多発関節炎を主訴にした初診の若年女性患者さんの診察を行いました。
両手指のPIPJとMPJの7関節、および両肩・膝関節・前足部に腫脹を認めます。
単純X線像でも手指のMP関節で関節裂隙の狭小化を認めました。ACR/EULAR分類基準は血液生化学検査が未なので4点ですが、高い確率で6点を越えることが予想されます。
抗CCP抗体等の血液生化学検査の結果がでるのに数日かかるのですが、初診の段階で関節リウマチの治療を開始する前提で診察を進めました。
1週間後に血液生化学検査のデータが出揃った時点でMTX投与を開始するつもりなのですが、若年女性の場合はひとつの問題があります。
それは「MTX投与中は妊娠してはいけない」ことを告知する必要があることです。若年女性の場合には挙児希望が無くても妊娠する可能性があります。
MTXは極めて催奇形性が高いです。MTXガイドラインでは妊娠希望の場合、少なくとも3ヵ月前にはMTXを中止する必要があると記載されています。
しかし、私的には3ヵ月では気持ち悪いので、できるだけ半年前からMTXを中止するようにしています。計画的に妊娠・出産する場合でさえも気を使わざるを得ません。
MTX投与中に前触れなく妊娠してしまった場合には、計画的に妊娠・出産する場合の比では無いぐらい大変なことになります。
そのまま出産することは極めて重大な結果を引き起こすため、患者さん・主治医ともお互いに非常に大きな精神的な負担になってしまいます。
このようなことを念頭に置いたうえで、MTX服用中の妊娠は絶対に避けるべきことをあらかじめ説明しておくことが必要だと思います。
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MTX
先日の出産希望の関節リウマチ患者さんの話のつづきです。
” 出産 ” というと女性を思い浮かべますが、男性にも関係有ることが盲点だと思います。
MTXガイドラインでは妊娠希望の場合、少なくとも3ヵ月前にはMTXを中止する必要があると記載されていますが、これは男性にも当てはまるのです。
”妊娠”というと私達は女性にばかり目が行きがちで、MTX服用中の男性が妊娠に関わることをついつい失念しがちです。この場合、皆が不幸になるので忘れずに注意喚起したいものです。
しかし、男性患者と妊娠・出産について会話する場面はあまり無いと思います。また最近では40歳台前半でも不妊治療を行っている例もあるため、年齢だけで線引きできません。
そこで確実にMTX服用中の妊娠・出産は危険であることを周知するため、私は日本リウマチ学会が作成している患者さん向けのMTXパンフレットを導入時に配布するようにしています。
そして、妊娠・出産には男性も注意する必要があることを説明した上で、カルテにも患者さんに説明した上でMTXのパンフレットを手渡ししたことを記載しておきます。
このような手続を踏むことで、万が一にもMTX服用中に男性患者さんが奥さんを妊娠させてしまった時でも、当方に累が及ばないように予防線を張っておくとよいと思います。
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今日の午前は外来だったのですが、若年女性の関節リウマチの診察を行いました。
その方は第2子の周産期に関節リウマチを発症したのですが、もうひとり挙児希望しています。
この方は現在MTX 6mgで寛解状態です。MTXガイドラインでは妊娠希望の場合、少なくとも3ヵ月前にはMTXを中止する必要があると記載されています。
しかし、私的には3ヵ月では気持ち悪いので、できるだけ半年前からMTXを中止するようにしています。こうなると予定通り妊娠・出産するまで、少なくとも1年半近くかかることになります。
この間、MTXフリーの状態が続くのですが、当然関節リウマチが再燃するリスクが非常に高くなります。現にこの方も、妊娠・出産をきっかけにして関節リウマチを発症しています。
つまり子供は欲しいけれど、関節リウマチが再燃するリスクが高まるという困った状況に陥るのです。この状況に対応するには、現状では下記の2つの方法があります。
① MTXを2mg/月ずつ減量していく過程で、関節リウマチが再燃すればステロイドを投与する
② MTXを2mg/月ずつ減量していく過程で、関節リウマチが再燃すればバイオ製剤を導入する
経済的なことも含めて通常は①を採用するケースが多いと思います。ステロイドといってもリンデロンやデカドロンは胎盤を通過するので、プレドニンやプレドニゾロンを投与します。
しかしステロイドだけで疾患活動性を抑えられない場合は、生物学的製剤(エンブレルもしくはシムジア)を導入します。エンブレルやシムジアは胎盤を通過しにくいと言われているからです。
このあたりの匙加減はケースバイケースなので難しいですね。いすれにせよ、リウマチ医として最も注意することは、MTX服用中の妊娠は絶対に避けることを説明しておくことだと思います。
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関節リウマチの患者さんの治療をしていると、肺炎等の併発が心配になります。ある程度避けることができない合併症なのですが、併発するとその後の治療に大きな悪影響を及ぼします。
例えば生物学的製剤投与中の方に肺炎を併発した場合、主治医である私達だけでなく患者さん自身が怖がってしまい、生物学的製剤の再開を躊躇してしまうのです。
ある一定の確率で肺炎などの感染症を併発することは仕方が無いことですが、内科系リウマチ医に肺炎対策を御伺いする機会があったのでご紹介します。
関節リウマチの方は、いわゆる「リウマチ肺」の初期病変として、気管支拡張症様の変化を併発することが多いそうです。このため正常者と比べて肺炎や気管支炎を併発しやすくなります。
この先生は、関節リウマチでMTXや生物学的製剤を投与している患者さんにオゼックスを屯用として10錠ていどお守りとして処方しているそうです。オゼックスはキノロン系の抗菌薬です。
患者さんに、上気道炎の症状が発生したら1~2日の間はオゼックスを毎食後に服用するよう説明します。そして、2日経っても症状が軽快しなければ、内科を受診してもらいます。
このようにオゼックスを予防投与することで、重篤な肺炎に移行する前に予防線を張っておきます。患者さんのオゼックス過剰服用が危惧されますが、意外と皆さん自制している印象です。
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2012.7月ごろにMTX投与前には結核の既往を調べるためにクォンティフェロン(QFT)/ T-スポット®.TB、胸部CTまで施行しろ!という文章が添付文書に記載されてしまいました。
これは某大手製薬会社の保身による暴挙なのですが、未だにQFTやT-SPOT陽性例では副作用の強い抗結核療法を全例に施行しなければいけない状況が続いています。
先日もT-SPOTのみ陽性で胸部CTで所見の無い患者さんに対して、イソニアジド(INH)の単独予防投与を開始しました。何となく患者さんに対する罪悪感を感じます・・・。
抗結核剤の予防投与は、イソニアジド(INH)の単独予防投与です。末梢神経障害や視神経炎などの中枢神経障害予防のため、ビタミンB6製剤も併用することを忘れてはいけません。
通常、イソニアジドは6~9ヶ月投与します。法的にはT-SPOTのみ陽性で胸部CTで所見の無い患者さんに対して抗結核剤の予防投与を行う場合も「潜在性結核感染症」になるそうです。
この場合、保健所に結核発生届をしなければいけません。届出をすると抗結核療法の公的補助を受けることが可能です。しかし、T-SPOTが陽性なだけで、ここまでしないといけないとは・・・
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