昨日の午前は人工膝関節全置換術(TKA)でした。
大腿骨の操作の際、骨切りを正確に行うために骨棘をどんどん切除すると思います。
PF周囲の骨棘切除は問題無いと思いますが、CRタイプのTKAでは顆間窩の骨棘を切除する際に注意が必要だと思います。
CRタイプではPCLを温存する必要がありますが、PCLの起始部は大腿骨顆間窩の内側壁前方なので、何気なく骨棘切除しているとPCL起始部を損傷してしまうことがあるからです。
このため、私は大腿骨顆間窩の骨棘切除の際には外側の骨棘は派手に切除しますが、内側の骨棘はやや控えめに切除することにしています。
蛇足ですが大腿骨・脛骨の骨切りを終了した際、膝関節を伸展位にして下腿を牽引すると膝窩部に太い索状物を触知するので、PCLが温存されていることが確認できます。
ときどきPCLを触知できないことがありますが、これは術中操作が原因ではなく術前からPCL機能不全が存在していたと私は考えています・・・。
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人工膝関節置換術[TKA]のすべて-安全・確実な手術のために
PCL
昨日の午前は人工膝関節全置換術(TKA)でした。
使用機種は、ライト・メディカル(WRIGHT MEDICAL)のEVOLUTIONでした。
今回は比較的若年者で可動域が良好なのでCRを選択しています。私が採用しているCR・PS・CSの選択方法の考え方は、こちらを参照していただければ幸いです。
CRで問題になることは、本当にPCLは温存されているのか?という点だと思います。ACLは直視下に容易に判別できますが、PCLは滑膜や後方関節包と混在しており分かりづらいからです。
私の場合、大腿骨と脛骨の骨切終了時に助手に下肢を引っ張ってもらいます。後方関節包に接して太い索状物を触知すれば、それはPCLであり温存されている証拠だと判断しています。
油断していると、PCLは脛骨骨切の際に後方骨皮質から剥がれてしまうことがあります。しかし、大腿骨の4面カットを施行する前の段階ならPSにコンバートすることが可能です。
大腿骨と脛骨の骨切終了時に、下肢を牽引しながら指先でPCLおよび膝窩筋腱のレリーフを触知する習慣を身に着けておいて損はないでしょう。
尚、EVOLUTIONには2014.5.28現在でフィン付きの脛骨トライアルがありません。本番での一発勝負になるので、脛骨の展開が充分かを確認するべきです。メーカーの改善が期待されます。
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先日、70歳台の膝関節複合靭帯損傷(PCL+MCL)を診療しました。通常、膝関節複合靭帯損傷といってもPCL損傷がメインの場合はそれほどやっかいではない場合が多いです。しかし、比較的高齢者のPCL+MCL損傷なので、逆にどうしようか思案しました。
脛骨後顆の裂離骨片が約10mm程度転位しているので、保存的に治療して骨癒合を得てもPCLの緊張が低下するのでPCLの機能不全が残存します。
しかし、ACLの機能不全ではないので、若年者ほど活動的ではない70歳台の方が日常生活でさほどPCLの機能不全のために困る場面には遭遇しないことが予想されます。
この方のADLを考えて、MCLは下肢ギプスシーネ固定で保存治療を行い、PCLの機能不全は筋力トレーニングで対応するという治療方針にしました。
具体的には下肢ギプスシーネ固定を3週間施行して、その後PCL軟性装具を2ヶ月常用するというスケジュールです。仮に瘢痕治癒になってもPCL機能を少しでも温存することを目指します。
一応、骨癒合を狙って受傷後4週までは膝屈曲角度を90度までに制限しようと思います。その後、徐々に屈曲制限を解除していきます。
現時点で私が考えた70歳台の膝関節複合靭帯損傷の治療方針ですが、エビデンスがあるわけではありません。このような方に対して、どのような治療方針が最も良い治療成績を得ることができるのでしょうか?
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総論 (診察・診断、治療全般、骨折・外傷、周術期管理)
各論 (手の外科、肩関節、脊椎、股関節、膝関節、足の外科、腫瘍)
その他 (関節リウマチ、痛風・高尿酸血症、骨粗鬆症、専門医試験)
今日の午前は外来でした。雨なので患者さんが少なくて楽な外来でした。
2ヵ月前に膝関節の後十字靭帯性裂離骨折を受傷された患者さんが来院されました。
この方は70歳台だったので、手術は施行せずにPCL軟性装具を常用していただき保存的に治療を行いました。本日の単純X線像で、脛骨後顆裂離骨片の骨癒合を確認できました。
しかし、裂離骨片が約10mm程度中枢側に転位した状態で骨癒合しているので、健側の膝関節と比べると後方への不安定性が若干残存していました。
PCLの靭帯部分での損傷に比べて、裂離骨折は骨癒合してしまえば予後が良いと思っていました。しかし転位した状態で骨癒合するのであれば、機能的予後は大差無いかもしれません・・・。
よく考えてみれば、転位した距離 : PCLの全長=1:5 程度にはなりそうです。これだけ転位した距離の全長に対する比率が高いと、PCLが機能不全になることも納得できます。
やはり、若年者で転位が大きな後十字靭帯性裂離骨折は、基本的には手術をお勧めした方が膝関節の機能的予後は良好なのかなと思いました。
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