少し前に橈骨遠位端骨折に対して、ロッキングプレートによる骨折観血的手術を施行しました。橈骨のアライメントは良好で、解剖学的整復はバッチリです。


しかし、同時に併発していたTFCC損傷による症状が残存した症例を経験してしまいました。そこで、いくつかのTFCC関連の文献に当たってみたところ、下記が優れていると思いました。



TFCCと尺骨骨折に対する処置 JMIOS No.52 53-61 2009



ロッキングプレートの使用によって、高率に橈骨遠位端骨折の解剖学的整復が可能になり、強固な固定下での早期運動療法が可能となりました。


一方、早期運動療法のために、尺側部損傷には保存治療が行われなくなりました。尺側部損傷の主体はDRUJに関する損傷です。特にDRUJの不安定性があると尺側痛が残存します。


慢性期の手関節尺側部傷害の手術例は、50歳台以前の若年者に限局しています。このことから若年者では、観血的手術後のDRUJ不安定性によって下記期間の外固定が推奨されています。



  • DRUJの不安定性あるが亜脱臼しない(尺骨茎状突起骨折の転位なし): 3週間
  • DRUJが亜脱臼する(尺骨茎状突起骨折の転位が大きい、TFCC完全断裂): 6週間



私の経験でも、高齢者の尺側部痛は問題にならないことが多いですが、若年・壮年層では治療に難渋するケースを散見します。


これらの方には、敢えて手関節に対する早期運動療法を控えて、術後は良肢位での外固定を検討するべきかもしれません。






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