整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

THA

THA: 軟骨下骨は破るべからず

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先日、人工股関節全置換術(THA)における筋群による圧迫とカップの固定性について考察しました。本日はその続編です。


前述したように、股関節周囲筋群が緊張するおかげで、カップ-寛骨臼間には常に圧迫力が加わり固定性が強固になるのでは? と考察しました。


おそらく、スクリューはカップ-寛骨臼間の剪断力予防の意味合いが強いのでしょう。しかし、これが当てはまらない状態になることが時々あります。


その一例として、骨粗鬆症の症例において寛骨臼の軟骨下骨をリーミングでやぶってしまった結果、脆弱な海綿骨が全周性に露出したときに発生しやすくなります。


このような症例でカップの中心性移動(central migration)が発生すると、カップ-寛骨臼間の圧迫力が弱まり、固定性が更に減弱することが予想されます。


こうなるとカップが寛骨臼内で動きやすくなるため、ますます中心性移動が進んでしまうという悪循環をきたす可能性があります。


このように考えるとTHAの寛骨臼リーミングでは、軟骨下骨をある程度残した状態でリーミングを終了することが推奨されるのではないでしょうか。


今までは経験的に軟骨下骨を完全に破らないように心掛けていましたが、これからは中心性移動を防止するためにも注意していこうと思います。





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髄内出血にはオキシドールが有用

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人工股関節全置換術(THA)では、術中に大腿骨髄腔からの出血がだらだら続く症例をときどき経験します。


軟部組織からの出血なら焼却凝固等で対応可能ですが、大腿骨髄腔からの出血の場合、実際に採り得る手段はほとんど無いのが現実です。


敢えて言うなら麻酔科医師にお願いして血圧を低めにコントロールしてもらうことですが、血圧を下げたからと言ってすぐに髄腔からの出血が止まるわけではありません。


このような症例は、ババッと手早く手術を終わればよい! という方向に走りがちですが、オキシドールで大腿骨髄内洗浄を行うとかなり止血されることに最近気付きました。



私たちの施設では、THAやTKAの際にオキシドールで洗浄していますが、これは佐賀大学の佛淵教授(学長)の手術見学で学んだことです。


オキシドールで洗浄する目的は、①殺菌 ②止血 ですが、特に②の止血効果は目に見えてよく分かります。当初は習慣的にオキシドールで洗浄するだけでした。


しかし、最近では大腿骨髄内からの出血が多い場合には、積極的にオキシドールで洗浄して止血(?)することにしています。


インプラントが設置下でのオキシドール使用に関しては、気持ち的にやや躊躇してしまいます。しかし、この程度のことでインプラントの寿命が短くなることはおそらく無いと思います。



THAの際に大腿骨髄内からの出血で困ったら、オキシドールでの大腿骨髄内洗浄を検討しても良いかもしれませんね。





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THA: 筋群の圧迫力とカップ固定性

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先日のことですが、人工股関節全置換術(THA)を施行しながら、ふと思いついたことがありました。それは、セメントレスカップの固定性に関することです。


欧米人と比較して、日本人は臼蓋形成不全股の割合が多いです。このため、充分な被覆を得ることが難しい症例を散見しますが、それでもカップが固定されるのはどうしてでしょう?


更に、カップをインパクションしても充分な固定性を得られないため、やむを得ずスクリューのみでの固定となる症例まであります。


このような症例でも、私は術直後から全荷重を許可していますが、カップが移動することは通常ありません。たった、3本のスクリューで、カップにかかるストレスを支えているのか?


ずっと疑問だったのですが、インプラントを整復した際に、中殿筋などの股関節周囲筋による股関節への「圧迫力」が、カップ―寛骨臼間に良い影響を与えていることに気付きました。


つまり、股関節周囲筋群が緊張するおかげで、カップ-寛骨臼間には常に圧迫力が加わっているのです。スクリューは、カップ-寛骨臼間の剪断力予防の意味合いが強いのでしょう。


こう考えると、セメントレスカップを設置する際の心理的ストレスが幾分軽減されました。ただし、正確にリーミングすることが大前提であることは言うまでもありません。




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貧乏ゆすりは変形性関節症にも有効

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
末期変形性股関節症に貧乏ゆすりが有効 です。


 

進行期・末期の変形性股関節症(股OA)に対する保存療法としてジグリング(貧乏ゆすり様の運動)が有効であるといわれているが、まだ研究報告は少ない。柳川リハビリテーション病院(福岡県)リハビリテーション科の広松聖夫氏は、第90回日本整形外科学会(5月18〜21日)で「ジグリングは、最初、キアリ骨盤骨切り術後の経過不良例に対する後療法として用いていたが、手術に頼らない保存療法としても有効であった」と述べた。


後療法にジグリングを併用  

主に進行・末期の股OAに行われる関節温存手術としてキアリ骨盤骨切り術がある。広松氏らは同手術の成績不良例について、これまで手術手技に工夫を加えて成績向上に努めてきたが、成績不良例をゼロにすることはできなかった。


1970年代にSalterらはCPM(Continuous Passive Motion:持続的他動運動)の概念を生み出し、1980年にウサギの大腿骨非荷重部に軟骨全層欠損を作製し、①ギプス固定群②放置群③CPM群(器具により24時間/日)−に割り付けて観察したところ、CPM群の52%で硝子様軟骨が再生したと報告した(J Bone Joint Surg Am 1980; 62: 1232-1251)。


この研究をヒントに同氏らは、キアリ骨盤骨切り術後の成績不良例にCPMを用いることを考えた。動物実験で示された器具による24時間連続CPMをそのまま臨床に用いることは不可能なため、代替法としてジグリングを後療法に取り入れることにした。そして、2013年には自動ジグリング器を導入した。


同院では、術後の後療法としてジグリングを行う場合、CPMとジグリングを併用してそれぞれ2時間ずつ、家庭でホームエクササイズとして行う場合は1日2時間を目標としたジグリングを行うという。


ジグリングで関節裂隙が開大  

広松氏らは、①2000年以降に同院でキアリ骨盤骨切り術を行った股OA例の385股のうち進行期・末期例で2年以上の経過観察を行い、術直後に関節裂隙の開大が見られない例または経過中に関節裂隙の狭小化が生じた例(92股)②2016年10月末までに人工股関節置換術(THR)を望まない進行・末期の股OA症例のうち、手術をせずジグリングのみで対応し、6カ月以上経過観察できた141股に対するジグリングの効果を検討した。


その結果、キアリ骨盤骨切り術後の経過不良例に対するジグリングにより、65股(70%)で関節裂隙の開大(2mm以上)が見られた。ジグリング有効群と無効群の患者背景の比較では年齢、術前Sharp角、術前Acetabular-Head Index(AHI)などに差は見られなかったが、術前BMIでは有意差が認められ、有効群でやや高かった。


手術せずジグリングのみを行った症例では43股(30%)で関節裂隙の開大が見られた。有効群と無効群の患者背景の比較では年齢、術前Sharp角、術前AHIなどに差は見られなかったが、初診時にroof osteophyte(臼蓋の骨棘)を有する割合は有効群で有意に高かった。


同氏は、内科的合併症のためTHRができずにジグリングを行った股OA末期の女性(71歳)を紹介。ジグリング開始から1年半後に徐々に関節裂隙が開大し始め、2年11カ月時点で良好な関節裂隙の開大が認められた(写真)。その他、手術をしたくない複数の末期股OA患者でジグリングの効果が認められた症例も提示され、糖尿病合併例、脳性麻痺例、関節リウマチ合併例などでも有効であった。


目標は軟骨の再生 

変形性関節症に対する運動療法の有効性についての研究は、膝関節に関するものがほとんどで股関節に関しては研究自体が少なくコンセンサスがいまだ得られていないのが現状である。2014年に世界初のプラセボを対照群とした、股OAの理学療法に対するランダム化比較試験が行われたが、股OAに対する運動療法(筋トレ、ストレッチを主体とした従来の理学療法)は効果がないどころか若干の有害事象が見られたという結果であった(JAMA 2014; 311: 1987-1997)。


進行期・末期股OAの究極の目標は軟骨再生にあり、軟骨再生が得られれば長期的な症状の改善が期待でき、THRの回避にもつながる。広松氏は「ジグリングはシンプルであるが、股OA治療に新たな視点をもたらすものと考えられるが、まだ未知の要素も残されている」とし、「現在、治療効果に影響する因子の検証、JHEQ(日本整形外科学会股関節疾患評価質問票)、関節裂隙の開大を主要評価項目とした多施設共同研究の準備を進めている」と今後を展望した。





これが○○クリニック院長の書いた一般人向け書籍なら、「出た!」と言う感じですが、柳川リハビリテーション病院の医師が日整会で発表しているので重みが違います。


ジグリングに関しては、過去に 貧乏ゆすりが命を救う? でも話題にしたことがあります。見た目は悪いですが、ジグリング(貧乏ゆすり)は身体には良いのかもしれません。


今回は日整会での講演なので注目が集まりましたが、クリニックや接骨院の間ではジグリングが変形性関節症に対して有効な治療法であることは、そこそこ有名だったようです。


もちろん、THAほどの切れ味の良さは到底望めませんが、手術を回避したり先送りしたというニーズに対しては、減量や筋力トレーニングと同様に有効な選択枝のひとつかもしれません。






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初学者が股関節外科の基礎および治療体系を学習するにあたり最もお勧めの書籍です。日本を代表する執筆陣が股関節外科に関するあらゆる事項を、非常に分かりやすく解説しています。この1冊があれば股関節外科のほぼ全ての疑問点を解消できると思います。


         




やはり患肢マーキングは最後の砦

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先日の人工股関節全置換術(THA)で、ちょっとした失態を演じました。両変形性股関節症の患者さんなのですが、左右間違えて作図していたのです。


前日の患肢マーキングの際には、きっちり患側にマーキングしています。また、診療録の記載も間違っておらず、作図だけが左右間違いでした。


当日朝のイメージトレーニングの際にも、患側で行っていたため、どうやら作図の時だけ左右勘違いしていたようです。


私は業務効率化のために、毎週木曜日の夜にまとめて作図をするようにしています。このため、他の症例との勘違いが起こったのかもしれません。


そして最大の問題は、作図の左右間違いに気付いたのは麻酔導入後であったことです。このため、この時点では患者さんに直接確認することはできません。


しかし、前日に自ら行った患肢マーキングのおかげで、自信を持って「こちら側の手術で間違い無い」と言うことができました。


私は習慣的に、THAなら股関節を、TKAなら膝関節を軽く屈伸させながら、「痛いのはこちら側でいいですね」と患者さんに確認しています。


患者さんは「痛たた、こっちです」とおっしゃられるので、間違いようがありません。この時のマーキングの記憶が、患側間違いの防波堤になっていたようです。


手術当日のイメージトレーニングを患側で行っていたので、全く問題なく手術は終了しました。少し後味が悪いですが、リスク管理が有効であったことを確認できたと思っています。


ちなみの左右間違いに気付かず最後まで手術を施行した場合には、過去の判例で1500万円の賠償金額が命じられたことがあったそうです。こわいこわい、十分に注意しよう。。。




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