今日の午前も人工股関節全置換術(THA)でした。
連日のTHAネタで恐縮です・・・。
この方は、幼少時にSmith-Petersen approachで前方からの股関節手術を受けていました。股関節前方の癒着が予想されたので、今回は前外側アプローチを選択しました。
単純X線像のごとく、中~高等度の臼蓋形成不全がある股関節だったので、リーミングを慎重に施行する必要がありました。CTで計測したところ、予定サイズは46>44mmでした。
セメントレスTHAは、セメントTHAよりはカップのhigh hip centerを許容しますが、それでもバイオメカニカルな観点からは、できるだけ原臼位に近いところにカップを設置する方が望ましいです。
しかし、日本人に多い二次性股関節症では原臼位にカップを設置することは、技術的に困難なことが少なくありません。このような「絶壁」のような寛骨臼でのリーミングにはコツがあります。
リーミング部位の決定は寛骨臼上縁からの距離を一つの基準としています。船橋整形外科病院の老沼先生は、寛骨臼のカップの上縁がくる部位に電気メスで直接マーキングされていました。
例えば寛骨臼上縁から10mmがカップの端になる場合には、10mmの平ノミをメジャー代わりにして寛骨臼内に電気メスで球状にマーキングします。今日の症例では約15mmでした。
この骨表面にマーキングしたラインを上縁にしてリーミングを行うと、high hip centerになることなく、術前計画通りの高位にカップを設置することができます。
今朝の症例では上図の矢印の位置がリーミングの上縁です。寛骨臼とカップの間には骨移植を行っています。カップ設置位置の上縁のマーキングは臼蓋形成不全股では勧めの方法です。
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股関節学