私は、高齢者の胸腰椎圧迫骨折では、ほぼ全例に近いほどロングフレームコルセットを3ヵ月間装着する治療法を選択しています。
入浴時と就寝時以外のロングフレームコルセット常用以外を課しており、就寝時には仰臥位となることを禁止しています。
これだけやっても比較的高率に、椎体の Vacuum cleft をきたしてしまいます。。。やはり就寝時も常用するべきなのかと感じていますが、実際はどうなのでしょう?
さて、Vacuum cleftは、骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合不全の指標とされています。椎体内にcleft(裂け目)が形成される部分は、椎体組織が壊死しているからです。
壊死を併発した椎体が圧壊すると、局所的には後弯を形成します。この状態で腰椎を伸展すると、椎体内壊死部分が上下に開大してcleft(裂け目)が形成されます。
腰椎を伸展したときに椎体にできる間隙は陰圧となるため、その空間には空気中の窒素や水分が貯留します。これがvacuum cleftの正体です。
vacuum cleftは腰椎伸展位の方が隙間が大きくなるので、XpやMRIを撮像する際には、臥位で施行するとはっきりします。
vacuum cleftを放置すると、最終的には偽関節となります。偽関節化するとアリゲーターサイン(Alligator sign)をきたします。
こうなると経皮的椎体形成術単独では不安定性を取り除くことは難しいです。
椎体形成術に加えて、胸腰椎後方固定術も併用する必要があります。
しかし、もともと骨粗鬆症が高度な患者さんが多いので、早期にスクリューが緩む危険性が高いです。こうならないためにも、vacuum cleftを発見したら早めの対応が必要となります。
自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。