人工関節周囲骨折(人工骨頭ステム下骨折)に対する治療法 その1 のつづきです。


人工関節周囲骨折は、寛骨臼骨折(両柱骨折)ほどではないにしても、難易度の高い骨折だと思っています。両者とも骨折を整復するまで止血する手段がありません。つまり、手術時間が長くなればなるほど、患者さんのダメージが大きくなるのです。


したがって、THAやTKAなどのように和やかな雰囲気の中で手術を施行するのではなく、持てるテクニックの全てを駆使して可能な限り手早く手術を終了します。都市伝説かもしれませんが、出血が大量になると、ある時点で”凝固系のシステムが壊れる”と思っています。


私自身、過去2度ほど”凝固系のシステムが壊れた”瞬間に立会いました。凝固系のシステムが壊れると、術野の風景が一変します。突然、術野のありとあらゆるところから薄い血液があふれ出てくるのです。


1度目は卒後6年目のときに人工股関節再置換術の際におこりました。オーベンの先生の助手として手術にはいっていたのですが、術野が突如として一変して出血が止まらなくなったのです。その経験は、私の中でトラウマになりました。


2度目も人工股関節再置換術の際におこりました。このときは私が執刀していました。少し目を離したすきに、前立ちの先生が大腿骨を内旋してしまい骨幹部骨折を併発しました。まさに、インプランテーション直前の出来事でしたが、このときも骨折を契機として術野が一変しました。


前回の経験があったので一切躊躇せず、あふれ出てくる血液と格闘しながらすぐに閉創しました。DICを併発しましたが10日程度で持ち直し、最終的にはロングセメントステムでの再置換+onlay graftを施行して無事退院まで持っていくことができました。


1回目の経験が無ければ、無駄な抵抗をして悲惨な結果になっていたと思います。いつまでたっても思わぬところで、足をすくわれるのが手術だと痛感しました。