健康食品やサプリメントを考える その2 のつづきです


③その他の健康食品は、客観的な効用・効果が全く証明されていません。仮にメタアナリシスを行っても有意な効果が証明されることはまず無いでしょう。


整形外科医になじみの深い(?)健康食品にグルコサミンやコンドロイチン硫酸があります。グルコサミンは滑液の成分であるヒアルロン酸を構成する物質で、コンドロイチン硫酸は関節軟骨の成分です。


グルコサミンやコンドロイチン硫酸は、高齢者の関節痛に効果があると宣伝されています。これらの成分は関節軟骨や滑液の構成物質なので、経口摂取することですり減った軟骨の再生を促したり、滑液の補充になるという理屈だそうです。


しかし、これらが効果を発揮するには2つの大きな壁があります。一つ目はヒアルロン酸もコンドロイチン硫酸も分子量が大きく、経口摂取しても吸収されないことです。この問題をクリア(?)するために、ヒアルロン酸よりも分子量が小さなグルコサミンや、コンドロイチン硫酸の中でも特に低分子の物質が使用されています。


2つ目の大きな壁として、仮にグルコサミンやコンドロイチン硫酸が体内に吸収されたとしても、これらの物質が都合よく関節に到達して軟骨の再生や滑液の増加を促してくれるのかという問題があります。感覚的には経口摂取した成分の1/10000~100000でも関節に到達したら御の字かなと思います・・・。


整形外科医の常識では、ヒアルロン酸の関節腔内注射においてヒアルロン酸の分子量が大きければ大きい程、関節痛の除痛効果を見込めます(例えばサイビスク)。しかし市販の健康食品は経口摂取という高いハードルをクリア(?)するために、分子量が低いほど関節の除痛効果を期待できる良質な健康食品(!)というワケの分からないロジックがまかり通っています。


以上を総括すると、グルコサミン・コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸の経口摂取は、消費者の無知につけこんだ詐欺的な商品としかいいようがないです・・・。ただ、書いていて気付いたのですが、やはり整形外科医でなければこれらの知識は無いため、業者のセールストークに騙されても仕方がないのかもしれないと思いました。


もしかしたら、他科の医師でさえもこれらの健康食品が関節痛に効くと思っている方がいらっしゃるかもしれません。整形外科医の役割として、健康食品に騙されないように啓蒙することも必要かなと思いました。


※ 私は外来で患者さんに健康食品やサプリメントの効用について訊かれると、『さほど体に悪くはないでしょうがドブにお金を捨てているのと同じなので、そのお金で美味しい食べ物を食べる方が心が豊かになると思います』と答えるようにしています。