今日の午前は、外来でした。
2ヶ月前発症の環指狭窄性屈筋腱鞘炎(ばね指)の方が初診で来ました。
普段ならまず腱鞘内注射で様子をみるところですが、かなりきついスナッピングだったので経皮的腱鞘切開術を施行しました。腱鞘炎による痛みが主訴の方には腱鞘内注射が有効ですが、スナッピング(引っかかり)が主訴の場合にはあまり効果が無いと思っています。
経皮的腱鞘切開術をマスターすると結構重宝します。腱鞘切開術をわざわざ手術室で施行していると、手術申し込みや指示出し等で時間を取られますが、診察室で手軽にできるので時間の節約になります。
コツおよび方法は、下記の如くです。
① 母指ばね指には手を出さない(直視下で従来通りに行う)
② 慣れないうちは素手(指先をイソジン消毒)で行う。グローブ越しでは指先の感覚が鈍ります。
② 18G針を皮下に刺入して、プローベで探る感覚で腱鞘表面に針先を進める
③ 抵抗感のある組織(=腱鞘表面)に針先が到達した時点で、長軸方向に針先で表層からすこしずつ切離します。
④ 通常、1回では切離できないので4-5回往復することが多いです。
⑤ 切離の際に、耳で聞こえるほどの”ジャリジャリ”した切離音が聞こえます。
ピットフォールは、下記のごとくです。
① 術後にスナッピングは解除されても、”シャリシャリ感”が残存することがある
② あくまで手術なので、当日の窓口支払いが高額になることを患者さんに説明しておく
③ 間違っても、指神経や屈筋腱を切離しないでください!
初めての方は、先輩医師の手技を見て予習しておくべきでしょう。尚、応用編として変形性股関節症に対するTHA術後に内転拘縮が解除されない場合(=麻酔下でも外転10度程度以下)、経皮的に内転筋切離術を施行できるようになります。
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突然のコメントをお許しください。
腱鞘切開術についてはOTの中でも様々な意見がありますが、
特に術後のリハビリテーションを怠ると屈筋腱の癒着等によるPIPの屈曲拘縮が生じます。そのことにより手術してもよくならなかったとの不満も多く聞かれるため、術後のリハビリテーションオーダーをおすすめします。
とくにA2プーリーの切開は腱の弓なり現象が発生するため慎重に行うこと、腱鞘は必ず縫合することが重要であると考えております。
リハビリテーションでの保存療法も効果がありますので、今後の治療選択の1つとして考えていただければ幸いです。
参考文献:坪田貞子 編: 臨床ハンドセラピイ 第1版、文江堂、pp226-230,2011