最近、関節リウマチの初診の方で、HBs抗体陽性の方が多いです。日本肝臓学会が『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン 』を作成してから非常に外来での手間が煩雑になりました。B型肝炎訴訟に懲りた国がガイドライン作成を促したようです。


このガイドラインによるとHBs抗体陽性であれば、全例でHBV-DNA定量(=血中のウイルス量)を測定することを推奨(半ば強制ですね・・・)しています。実際、HBs抗体陽性の方は結構多いので、かなりの数の方のHBV-DNA定量を毎月(!)測定することになります。


感覚的には医療費の無駄使いに思えるのですが、万が一にもde novo B型肝炎を併発して訴訟に発展したときのことを考えると、ガイドラインに謳われている現状では施行せざる得ません。これは訴訟を怖れる国と製薬会社が、声を上げることのできない国民(健康保険料を支払っている)にツケ回ししている構図です。


先日も大阪大学付属病院でリツキシマブ投与中の方にde novo B型肝炎を併発した事案が訴訟になったというニュースがありました。もちろん、化学療法中にHBV-DNA定量は測定されていたようですが、毎月測定していなかったため訴えられたようです・・・。


遺族の気持ちも分からないことはないですが、このような訴訟が頻発すると医療サイドも萎縮してしまい、本来救えるはずの命が救えなくなってしまいます。アメリカのような訴訟社会にならないことを切に祈るばかりです。


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ホームページから、『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』 をダウンロードできます。