日本生体電気・物理刺激研究会
 のつづきです。


和歌山県立医科大学の吉田宗人教授は、脊椎内視鏡に関する講演でした。脊椎内視鏡のメッカといわれている和歌山に対してジェラシーを感じている脊椎外科医も多いようですが(笑)、さすがの講演内容でした。


吉田教授の治療方針は、ピンポイントサージェリーです。これは、人間の持つ自然治癒能力を最大限利用するという考え方に基づいています。つまり、一度に全ての画像上の障害部位を手術するのではなく、症状の原因箇所にのみ低侵襲手術を行うということです。


ピンポイントに的を絞って低侵襲手術を行い、何年かして症状が再発すればその時点での原因箇所に対して更に手術を行うそうです。画像上で脊椎狭窄症のある方のうち60-70%は無症状なので、「疑わしきは罰せよ」という風潮に一石を投じています。同一箇所でなければ複数回手術を恐れてはいけないのかなと思いました。


15年間におよぶ和歌山での疫学調査の結果、70歳以降では腰椎すべり症や変性側弯はほとんど進行しないそうです。このことから脊椎固定術は不要な場合が多いそうで、適応は50歳台までの肉体労働者に限られるのでは?という意見をおっしゃられていました。


70歳以降の腰椎すべり症や変性側弯の安定性は、骨棘形成によってもたらされているので、手術の際にも極力骨棘は温存するとのことでした。また意外なほど椎間孔外狭窄(椎間関節の骨棘による狭窄)が多いので診断の際には注意が必要だそうです。


あと、同時手術(Tandem operation)を好んで施行しているそうです。頚椎+腰椎、多椎間、多椎間内外側などを、熟練の術者同士で同時に施行すると手術時間が大幅に短縮するとのことです。普通の病院には脊椎内視鏡が2台以上無いので物理的に不可能ですが、大学ならではのトピックスかなと思いました。




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