Medical Tribune 2013年11月28日号に興味深い記事がありました。「靴のインソールによる疼痛軽減効果認められず」です。以下、Medical Tribuneからの転載です。


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〔シカゴ〕マンチェスター大学(英マンチェスター)のMatthew J. Parkes氏らは,内側型変形性膝関節症(膝OA)の疼痛軽減に用いられる外側は高く内側が低い靴のインソール(ラテラルウェッジインソール)の有効性について,システマチックレビューとメタアナリシスを実施。同インソールを使用した膝OA患者と一般的なインソールを使用した同患者の間で,疼痛の軽減効果に有意差は認められなかったとする結果をJAMA(2013; 310: 722-730)に発表した。


近年,膝OAの有病率は上昇傾向にあるが,有効な治療選択肢は限られている。膝OAに対する人工関節置換術の施行が広がる中,有効な保存療法の開発は最優先課題とされている。  

膝OAで最も多いのは内側型であるが,その保存療法の1つに,靴底に内側よりも外側を高くするよう傾斜を付けたラテラルウェッジインソールを装着して膝関節の内側に対する負荷を軽減する方法がある。しかし,こうした治療法による疼痛の軽減効果に関する研究で一致した結果は得られていなかった。  

そこでParkes氏らは今回,内側型膝OA患者に対するインソールによる疼痛軽減効果について,システマチックレビューとメタアナリシスを行った。Cochrane Central Register of Controlled Trials,EMBASE,AMED,MEDLINE, CINAHL Plus,ScienceDirect,SCOPUSなどにより2013年5月までに発表された論文2,056件を収集し,インソール使用群と対照群に分けて膝OA患者の疼痛を評価したランダム化比較試験(RCT)12件を抽出した。

12件の研究の対象者数は計885例で,502例は足の外側が高く内側に向かって5°〜15°傾斜したラテラルウェッジインソール群に,383例は一般的なインソールの使用またはインソールを使用していない対照群に割り付けられていた。試験期間は最短で2週間,最長は2年間だった。  

ラテラルウェッジインソール群と対照群のエフェクトサイズの標準化平均差(SMD)は−0.47〔95%信頼区間(CI)0.80〜0.14〕で,インソール使用群で有意な効果が認められた(P<0.001)。これは,Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index(WOMAC)疼痛スコア(0〜20ポイント)に換算すると,−2.12ポイントの改善に相当したが,試験間に高い異質性が認められた(I2=82.7%)。  

さらに,対照群をインソール未使用例に限定して4件の研究データを基にメタアナリシスを実施した。その結果,ラテラルウェッジインソール群とインソール未使用群のエフェクトサイズのSMDは−1.20(95%CI −2.09〜−0.30,I2=85.0%)で,ラテラルウェッジインソール群で有意に低かった(P<0.001)。  

一方,ラテラルウェッジインソール群と一般的なインソール使用群を比較した解析(7件)では,エフェクトサイズのSMDは−0.03(95%CI−0.18〜0.12)で,両群間で有意差は認められず(P=0.37),試験間の異質性は低かった(I2=7.1%)。  

これらの結果から,Parkes氏らは「ラテラルウェッジインソールは内側型膝OA患者の疼痛緩和には有効ではないことが示唆された」としている。


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これは、なかなか厳しいレビューです。変形性膝関節症の保存治療の選択枝のひとつが消えてしまいました。確かにouter wedgeの足底板を作成しても、鎮痛効果はイマイチなことが多いです。


こうなると、ますます薬物療法や膝関節腔内注射(2013年版のAAOSのガイドラインでは推奨しないとされましたが・・・)中心の外来治療となりそうです。


もちろん、体重コントロールも有効な治療だと思いますが、生活習慣を変えないかぎり減量は難しいのが現状です。経験則によらないエビデンスを追求した膝関節の治療は本当に難しいですね。



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