昨日の午前は、アルバイト先での外来でした。
器械体操中に右手をついて肘関節を強制伸展してから痛いという小学生が初診しました。


単純X線像で、尺骨鈎状突起の裂離骨折を認めました。上腕骨内顆からMCLにかけての腫脹・圧痛はありませんでした。徒手検査でも内側の不安定性を認めませんでした。


尺骨鈎状突起骨折例では前方+内側不安定性をきたす複合靭帯損傷(不安定症)が多いと思いますが、幸い(?)この患児は尺骨鈎状突起裂離骨折のみのようです。


尺骨鈎状突起の転位が大きい複合靭帯損傷(不安定症)症例は手術適応です。手術は前方から展開して、尺骨鈎状突起をHerbert screw等で内固定します。


この手術は術野が深くて神経血管束を避ける必要があるので、私には苦手意識があります。しかし、今回は鈎状突起単独骨折であることと、小学生であるため保存治療を選択しました。


成人の保存治療では、最初の2週間程度は肘関節90度でギプスシーネ固定とします。そして受傷後1週の段階で、支柱付きの肘関節装具の採型を行います。


この装具には伸展制限をつけることができるようにストッパーをオプションで追加します。2週間でギプスシーネを除去してから、この装具を3ヶ月程度常用するのです。


当初は鈎状突起の転位を防ぐために、最初は屈曲45~60度までの伸展制限をつけておきます。段階的に伸展制限を軽減していき、最終的には受傷後6週程度で伸展制限を無くします。


成人で肘関節を長期間固定すると高度の拘縮を残します。可動域を保つには、早期から支柱付き・伸展制限付き装具装着下に積極的な肘関節可動域訓練を行う必要があるのです。


難点は、この支柱付き・伸展制限付き装具が約9万円と非常に高価なことです。自分の健康保険を利用する場合には価格のことも含めた話をするべきだと思います。


今回は小学生なので、多少長い期間外固定を行っても肘関節拘縮を残す可能性は低いです。したがって装具を処方せずに外固定を4~6週間程度施行することにしました。




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