今日の午前中は外来でした。
他科からの”首下がり症候群”の対診依頼がありました。


”首下がり”とは、座位や立位時に首が下がってしまう症状です。1986 年にLangeらが首下がりを呈した 12 例の症例を報告したのが最初です。


首下がり症候群では随意的に頚椎を伸展して首下がりを修正できることが多いですが、その姿勢を長続きすることができずに首が下ってしまいます。


この慢性的な首下がりのために視界が障害されて歩行し辛くなります。今回の対診依頼の患者さんの主訴は、まさしく首下がりによる歩行困難でした。


また、首下がりのために嚥下困難などをきたすこともあるようです。首下がりは見た目の悪さだけではなく、日常生活動作が制限されてしまうことが問題です。


首下がりの生じる機序として、①前頚筋の過剰緊張 ②後屈筋の筋力低下 が考えられています。それぞれ下記の疾患が原因として挙げられます。これ以外にも変形性頚椎症があります。

① パーキンソン病、多系統萎縮症
② 重症筋無力症、多発性筋炎



首下がり症候群の治療について、一般的に次のように報告されています。

① 薬剤惹起を疑う場合には原因薬剤の中止(ドパミンアゴニストなど)
② ボツリヌス毒素注射やアルコールや局所麻酔薬によるモーターポイントブロック治療
③ 脳深部刺激法



しかし実際には①が問題なければ中下位頚椎から傾斜しているタイプには頚椎カラーを、頚胸椎移行部から傾斜しているタイプには鎖骨バンド固定を処方するケースが多いと思います。


頚椎カラーや鎖骨バンドの装着で歩行状態が改善するため、患者さんの満足度が上がります。このため私の場合は、それ以上の外来治療やフォローを行わないことが多いです。


手術適応はほぼ無いが、原因特定や根治的治療が難しい”首下がり”症候群・・・。
本当に、頚椎カラーや鎖骨バンドの処方でよいのでしょうか?



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Critical thinking脊椎外科