今日の午前は、アルバイト先で外来をしていました。
1ヵ月前から右母指~環指橈側までのしびれが出現したという方が初診されました。


右母指球は萎縮しており、問診の段階で手根管症候群であることは容易に推測されます。しかし、この方の単純X線像を確認して驚きました。なんと月状骨周囲脱臼を併発しているのです。


この方は30年前にバイク事故で手関節の治療を受けたようですが、どうも月状骨周囲脱臼を見逃されていたようです。手関節背側の月状骨部分が陥凹しています。


既に、radiocarpal jointおよびmidcarpal jointにはOAを認めます。
側面像では掌側に脱臼した月状骨が派手に正中神経を圧迫していそうです。


論文を漁ってみたところ、手根管開放術の際に掌側脱臼した月状骨および舟状骨の一部を切除するという報告を散見しました。やはり掌側脱臼した月状骨がCTS発症に影響していそうです。


経舟状骨の月状骨周囲脱臼では、舟状骨骨折に目を奪われて月状骨脱臼を見逃してしまう可能性があります。万が一にも見逃してしまうと今回のようなことになってしまいます。


通常の舟状骨骨折と比べて、月状骨周囲脱臼では手関節の腫脹が極めて高度です。いつもと違う感じだな? と思ったら、側面像で月状骨の位置を確認する習慣が必要かもしれません。



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