先日、大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭挿入術を施行しました。
この方は80歳台後半で、転倒前は独歩可能だったとのことでした。


しかし、入院時から患肢を屈曲・内転させて動かしません。一応、単純X線像を撮影時には股関節を伸展できたので、特に気にも留めませんでした。


いざ、麻酔がかかって側臥位にしたときに患側股関節が外転しないことに気付きました。屈曲・内旋は問題なく可能なのですが、他動的にも伸展・外転・外旋しないのです。


股関節を外転しようとすると、内転筋群が著明に緊張します。どうやら受傷前から股関節の屈曲・内転拘縮があったようです。手術自体は屈曲・内旋できるため問題なく終了しました。


しかし、仰臥位にしても股関節は軽度の屈曲・内旋位のままです。他動でも股関節が外転しないので、やむを得ず経皮的に内転筋切離術を追加しました。


以前に、大腿骨転子部骨折で高度の股関節拘縮のため手術不能だったことがありました。その症例はオムツ骨折だったので、ある程度の予測が可能でした。


今回は転倒前は独歩だったので、股関節拘縮を予測することはかなり難しいと思います。結果的には術後も変わらず拘縮が残存したので、内転筋切離術を施行してようやく解除されました。


今回の経験から、受傷前のADLが独歩であっても股関節拘縮が存在する場合があることを学びました。高齢者の骨折はなかなか奥が深いものです。



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