先日、当直をしていた際の出来事です。
2歳児が父親と遊んでいてもみ合いになり、上肢を動かさなくなったとのことで受診されました。


過去に3度の肘内障の既往があったとのことで、診察したところ確かに今回も肘内障でした。整復操作をするとかなり大きなクリックを触知しました。


ここまでは普通の肘内障診療の流れですが、親御さんから肘内障の整復方法を教えて欲しいと懇願されました。確かに夜に一家総出で病院に来るのは一苦労です。


少し考えましたが、一般の方に肘内障の整復方法を教えるのは厄介だという結論に達したため、教えることは出来ないとお話しました。


肘内障の整復操作自体は容易なので、飲み込みの早い人ならすぐにマスターできると思います。しかし、整復操作を行うのはあくまで「肘内障」の診断をつけてからです。


腕を引っ張ってから上肢を動かさない等の典型的な肘内障であれば、診断も容易かもしれませんが、今回の例も含めて受傷機転不明な例が多いです。


このような例では上腕骨顆上骨折や上腕骨外顆骨折などである可能性もあります。診断する能力の無い人に整復方法を教えるのは、子供に銃を与えるようなものです。


よく、ネット上では肘内障の整復方法を紹介した接骨院の宣伝動画があります。しかし、私は上記の理由で、これらの動画は百害あって一理無しだと考えています。


親御さんが自分で整復してくれればこちらも楽なのですが、知識の無い一般の方にそこまでのリスクを押し付けるのもどうかと思うので、これからも地道に肘内障の整復をしようと思います。



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