先日の外来で、中指のロッキングを主訴に患者さんが初診されました。
この方は50歳台の女性で、この2~3ヵ月で数回ほど中指の伸展が不能となったそうです。
今までは徒手整復が可能だったようですが、その日は全く伸びなくなったので受診されました。以前、MP関節のロッキングを経験したので、少し身構えて診察を行いました。
身体所見では、MP関節・PIP関節・DIP関節ともに60度程度で屈曲しています。PIP、DIPとも動かせなかったので、どうやら屈筋腱がA1 pullyで固定されている通常のバネ指のようです。
一応、バネ指の診断でステロイド腱鞘内注射を施行して緩徐にマニュピレーションを施行したところ、ロッキングは解除されました。
自動で中指を屈伸してもらうと、A1 pullyでクリックを触知しました。やはり、バネ指のようです。MP関節のロッキングの場合には、当然A1 pullyでのクリックを触知しません。
両者は、ロッキング時のPIP関節およびDIP関節の可動域制限の有無で鑑別できます。バネ指ではPIP・DIP関節とも動かせないですが、MP関節ロッキングでは可動域制限が無いのです。
MP関節のロッキングの場合には、下手にロッキングを解除すると手術の際に難渋します。このため、初診時に正確に鑑別することが治療のポイントだと思います。
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