先日のことですが日直をしていると、頭部を打撲してから嘔吐しているという子供が母親に付き添われて受付に来ているとの連絡がありました。


他の急患の対応中だったこともあるのですが、子供の頭部外傷は私の診察能力を超えると思われたので、受付の方に脳神経外科医の居る病院に行っていただくように伝えてもらいました。


このようなケースでは、受付が説明するよりも医師が直接母親に説明するべきだという意見があるかもしれませんが、私は絶対に自ら出て行かないようにしています。


確かに医師が直接説明した方が説得力があって患者さんが納得するケースは多いと思います。しかし、この対応は諸刃の剣で、医師の説得が失敗した場合には収集がつかなくなります。


そして、医師が患者さんと接触した時点で、患者さんからすると「診察を受けた」と認識されるリスクが発生します。確かに医師の応召義務があるので、このあたりはかなりグレーな領域です。


しかし、医師法第19条の出来た頃の医療水準の低かった時代と違い、現在の日本では少しでも誤診があると医療機関は格好のスケープゴートにされてしまいます。


膨大な医学知識の全てをひとりの医師で網羅することは物理的に不可能です。このため、自分の専門外と思われる患者さんに対して安易に対応するのは危険な行為だと思います。


昔は私も、医師が直接対応することが「誠意」だと思っていました。しかし事態がこじれて収集がつかなくなった経験をすることで、医師が矢面に立つリスクを身をもって知ることになりました。


やはり、このような場合には第三者にやんわりと他の医療機関への受診を促して貰う方が、最終的には患者さんの利益になるし、スマートで大人の対応ではないでしょうか?



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