先日、NISAで国際分散投資型ファンドをドルコスト平均法を実践している先生から、このまま投資を続けるべきか、一度売却して現金ポジションを高めるべきかという質問をいただきました。
このファンドは日本を含めた世界の株式と債券に投資するために、8本のVanguard ETFを用いて株式と債券の比率が50%ずつとなるように配分しているファンド・オブ・ファンズです。
この質問に対して、私は下記のような論点で回答しました。
1. そもそもNISAでの投資は妥当なのか?
2. 国際分散投資型ファンド・オブ・ファンズを選択する是非は?
3. ドルコスト平均法での積立てを続けるべきか、
売却して現金ポジションを高めてチャンスの窓を探すのを待つ方が良いのか?
①に関しては、通常では株や投資信託などで利益を得ると税金がかかりますが、NISAを利用すると税金がかかりません。もちろん無制限ではありませんが年間100万円まで運用可能です。
投資から5年以内に得られた利益が非課税となります。これが5年間続くので、最大500万円まで資金を投入できます。 一見有利な制度に見えますが、NISAには致命的な欠点があります。
5年経過時点で評価損が発生していると、損益通算や損失の繰越ができないばかりか、
「その時点の価格が取得金額」となってしまいます。
具体例を挙げます。100万円で購入したA株が、非課税期間終了時に80万円になっていたとします。このケースではA株の取得金額が80万円になってしまいます。
その後値上がりしたので120万円で売却した場合には、40万円が譲渡益となり8万円の株式譲渡税がかかってしまいます。
本来ならば取得金額が100万円なので20万円の譲渡益となり、4万円の株式譲渡税のはずが、4万円も余分に株式譲渡税が掛かってしまいます。
これだけ期間の縛りがあると、個人投資家唯一の強みである長期保有という武器を全く使えません。少なくとも本気で資産形成を志す個人投資家はNISAには近づかない方が無難でしょう。
②に関しては、この手のファンドは、 自分でも下記の日本国内でも購入可能な海外ETFをミックスすることで創り上げることができるポートフォリオです。
・ VT (世界株)
・ BND (米国債)
・ BNDX (米国以外の債券)
今回の国際分散投資型ファンドの信託報酬はオリジナルに比べてやや高いですが、概ね許容範囲内です。 しかし、強引に株式と債券を50%ずつにしていることはいただけません。
現在は債券バブルなので、BND、BNDXとも割高です。 少なくともアセットアローケーションは自分で行う方がべきでしょう。そして私なら現在のタイミングで債券投資は行わないと思います・・・
③に関しては、少なくとも含み益を得ているのならNISAなら譲渡益が掛からないので売却も悪くないと思います。しかし、チャンスの窓が開いたときにいきなり勝負することは難しいと思います。
経験を積む意味でマネックス証券等の外国株手数料の安いところでVTをドルコストで購入することも一法です。では、いまの状況で私ならどうするか? 基本はキャッシュを積み上げています。
このまま円安が続きそうに思えるのですが、相場が一方向に振れることは無いと思っているので、 円高に振れるタイミングをひたすら待つつもりです。
予想が外れたらみすみす外貨資産を購入するチャンスを逃すことになります。マクロの統計を見る限りでは円高になる要素が非常に少ないですが、 こればかりは神様しか分からないので・・・。
しかし、私の15年の投資歴を振り返ると、「欲しい」気持ちが強いときに購入すると、たいてい上手く行きません。本当に儲けるときは、心配で夜も眠れないほど切迫した状況下です。
理性で恐怖心を捻じ伏せて購入するときがベストタイミングでした。そして現在は「外貨資産をかなり欲しい」状況です。したがって、私の経験則では現在は購入するタイミングではなさそうです。
業務連絡
2015.5.23開催の「医師のための資産形成セミナー」にご参加いただいた先生方に動画のダウンロードURLをメールしました。万が一、届いていない先生方が居られましたらご連絡ください。
★★ 医師のための資産形成セミナー ★★
第88回日本整形外科学会学術総会期間中の2015年5月23日に開催した、本ブログ管理人による 「医師のための資産形成セミナー」 の動画、および講演で使用したスライドです。
医師のための資産形成セミナー
本セミナーは経済的自由獲得を目指す医師向けに開催しました。 資産形成マニュアル は、医師に最適化した資産形成手法だと自負していますが、文書だけでは伝わらないことも多いです。
本セミナーでは、資産形成マニュアルにおいて文面だけでは伝えきれなかった資産形成のコツや、寝ていても定期収入をもたらしてくれる 「資産の自動運転化」 を中心に説明しています。