Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
MIS-TKAがもたらしたのは意義か異議か? です。
人工膝関節全置換術(TKA)を最小侵襲手術手技(MIS)で行うMIS-TKAが提唱され,10年余りが経過した。
術後の疼痛軽減,早期機能回復が期待され日本でも急速に浸透したが,手術時間の延長や手術視野の制限,それに伴う軟部組織の損傷など,問題点も指摘されるようになった。
また,大腿四頭筋を温存する,皮切長を必要最小限にとどめる,膝蓋骨を翻転しない─ことがMIS-TKAのおおよその要件とされるが,明確な定義はないのが実情であり,何をもってMIS-TKAとするのか,疑問の声も聞かれる。
第46回日本人工関節学会ではMIS-TKAの意義を問う特別企画が催され,豊富な手術経験を持つ4氏が,推進派と非推進派に分かれて議論を交わした。
- さらなる低侵襲化に期待 ー杉本氏
- "最小侵襲"から"最適侵襲"へ ー水野氏
- "最小侵襲"から"最適侵襲"へ ー水野氏
- 技量に応じた無理のないTKAが重要 ー西池氏
詳細はリンク先を読んでいただきたいのですが、さすがに初期の頃のように皮膚切開の長さ云々といった馬鹿げた議論はなされていません。
一応、上記の4名の先生方はMIS-TKAの推進派と非推進派に分かれて議論されているのですが、結論はほぼ同じであると感じました。
- 熟練した術者が行うMIS-TKAは悪くはない
- 重要なのは「低侵襲」ではなく治療成績
可能な範囲で低侵襲を目指すless invasive surgery(LIS)や、無理のない範囲で低侵襲を目指す"最適侵襲"など、先生方の言葉や立場は違えど、治療成績重視の点は同じです。
私自身は並みの技量しか持ち合わせていない整形外科医のなので、俗に言うMIS-TKAを志向することはなく、安全・確実・無理のない範囲での低侵襲を心掛けて手術を行っています。
手術技量の上達は持って生まれた才能の差が大きいと思います。凡人では努力しても到達できる点が見えてしまいます。このため私は、自分の能力内での最良の結果を目指しています。
大事なのはMISではなく、治療成績を上げることだと思います。MISは治療成績を上げるための要素のひとつであり、治療成績>MISの関係をはき違えないようにする必要があると思います。