先日、日本整形外科学会雑誌 90(5)2016に掲載されていた教育研修講座を興味深く拝読しました。千葉大学の大鳥精司先生の 「脊椎障害の画像評価における進歩」 です。



腰部脊柱管狭窄症では脊柱管断面積が狭いほど手術が必要になる可能性が高いですが、最近の報告では腰部脊柱管狭窄症の予後にsedimentation signが重要だそうです。


sedimentationとは、沈殿という意味です。下図のように、sedimentation sign陰性とは馬尾神経が背側に沈殿しており、sedimentation sign陽性とは脊柱管内に浮いている状況です。





( Barz T, Melloh M, Staub LP, Lord SJ, Lange J, Roder CP, Theis JC, Merk HR. 
Nerve Root Sedimentation Sign - Evaluation of a New Radiological Sign in Lumbar Spinal Stenosis. SPINE 2010. 35 (8): 892-897 )




sedimentation sign陽性症例では保存療法に抵抗することが多く、このサインが腰部脊柱管狭窄症の重症度と手術移行に関連することが報告されました。



米国の大規模な前向き研究でも、腰部脊柱管狭窄症の66%はsedimentation sign陽性であり、陽性群は保存療法に抵抗することが多く、重症度や手術移行に関連するとされています。


私は今までMRIで脊柱管断面積のみを見ていましたが、言われてみれば硬膜管内の馬尾には上図のようなパターンがあるように思います。


しかし、その馬尾の硬膜管内での存在パターンが腰部脊柱管狭窄症の予後にまで影響を及ぼすとは、恥ずかしながら今回の教育研修講座を拝読するまで知りませんでした。


長期予後は現在の治療には直接的な影響を及ぼさないかもしれませんが、症状が高度で他椎間のsedimentation sign陽性例では少し積極的に手術を勧めるかもしれません。




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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。