Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
高校野球のピッチャーには「7イニング以下100球未満」を推奨 です。




高校野球では、過度な投球数や連投に次ぐ連投などが問題視されている。山形大学整形外科の宇野智洋氏らは、山形県の高校野球投手を対象に、登板時における投球数やイニング数、投球時の痛み、投球パフォーマンスなどについてアンケートを実施した結果から、1試合で8イニング以上または100球以上の投球数で投球時の痛みが強くなり、投球の困難度が高くなること、いずれも満たす場合は要注意であることを、第89回日本整形外科学会で指摘した。



100球以上かつ8回以上だと投球時痛が強くパフォーマンス悪化  


宇野氏らは、山形県の高校野球選手1,191人を対象にアンケートを実施。そのうち、投手296人の回答から1試合当たりの投球数やイニング数、投球困難度として投球時痛、スポーツや楽器などによる機能障害の程度を自己評価するDisability of the Arm, Shoulder, and Hand(DASH)を投球に即して変更したもの(以下、DASH投球)、投球パフォーマンスについて検討した。  


検討の結果、1試合当たりの平均は、投球数は75±32球、イニング数は4.7±2.3イニング、投球時痛(痛みなし0点~最悪の痛み40点)は8.1点、DASH投球(困難なし0点~最困難100点)は19点、投球パフォーマンス(最良100%~最低0%)は67%であった。  」


投球数から、100球未満(250人)と100球以上(46人)に分けて投球困難度を見ると、投球パフォーマンスには差がなかったが、投球時痛は100球以上群では平均10.1点と、100球未満群の7.7点に比べて有意に高く、DASH投球も100球以上群では25点と、100球未満群の19点に比べて有意に高かった。  


イニング数から、7イニング以下(252人)と8イニング以上(44人)で見ると、DASH投球と投球パフォーマンスは両群に差はなかったが、投球時痛は8イニング以上群では11.1点と7イニング以下群の7.5点に比べて有意に高く、肩肘の投球時痛に関しても8イニング以上群では10.8点と7イニング以下群の6.4点に比べて有意に高いことが認められた。  


さらに、「100球以上かつ8イニング以上」の群(41人)では投球時痛が11.9点と、「100球未満かつ8イニング以上」または「100球以上かつ7イニング以下」の群(65人)で7.2点、「100球未満かつ7イニング以下」の群(190人)では7.5点であったのに比べて有意に高いことが認められた。肩肘の投球時痛もそれぞれ11.6点、6.2点、6.4点と、「100球以上かつ8イニング以上」の群で有意に高いことがわかった(図)。




図. 投球数とイニング数による全身および肩肘の投球時痛







整形外科医として外来をやっているからそう思うだけかもしれませんが、とにかく中学生や高校生で肘関節や肩関節に問題を抱える選手が多過ぎる印象を受けます。


今回の提言は、
「7イニング以下100球未満」と分かりやすいので、選手だけではなく両親や監督・コーチなどの指導者に対する啓蒙フレーズとしても適切ではないかと思います。


学生スポーツの現場では、こちらで紹介したようなことがまかり通っています。また、両親の視野が狭くなっていて、子供の将来まで見通せていないケースも散見します。



「スポーツ」という言葉の持つ美しい響きに惑わされがちですが、目先の試合結果ではなく前途有望な子供たちの将来の方を重視する風潮になってほしいものです。





★★ 管理人お勧めの医学書 ★★
  


オーストラリア理学療法協会のスポーツ理学療法士による実践的な教科書です。
治療的テーピングの概要を学ぶことができます。