日本整形外科学会雑誌 第90巻 第7号 526-533 に、興味深い委員会報告がありました。
整形外科における組織移植の現状(2010-2014年)です。


日整会の移植・再生医療委員会が、2010~2014年の間に実施された組織移植についてアンケート調査を行いました。私は、同種骨移植に注目しました。


まず、骨移植は全体の85%を占めています。骨移植の中では、下記のような構成比でした。この比率は前回調査時とほぼ不変のようです。やはり同種骨移植はまだまだマイナーですね。

  • 自家骨   54%
  • 人工骨   42%
  • 保存同種骨   4%


次に、使用目的別同種骨移植は、下記のような構成比でした。人工関節と脊椎疾患に対する使用は経年的に増加しており、2010年と比較して2014年はそれぞれ2.0倍と1.7倍でした。

  • 人工関節  44%
  • 脊椎手術  38%

 
生体ドナーからの骨移植として、採取部位は下記のごとくです。やはり、大腿骨頚部骨折に際して同種骨を採取するケースがほとんどのようです。

  • 大腿骨頭   83%
  • 脛骨プラトー 15%
  • 切断肢      1%


脛骨プラトーは、TKAの際に採取します。採取できる骨量は少ないですが、実際に同種骨を使用する場面では、人工股関節再置換術の臼底欠損例で「蓋」として使用できるため有用です。


同種骨組織に対する低温加温処理は、80度10分が62%、60度10時間が14%でした。保存方法は、-80度の冷凍庫が93%、-20度の冷凍庫が7%でした。


ドナーの除外項目は、HBs抗原陽性、HCV抗体陽性、TPHA陽性、梅毒脂質抗原陽性、HIV抗体陽性は9割以上の施設で施行していました。


一方、HTLV-1抗体陽性(76%)、パルボウイルスB19抗体陽性(28%)、血液細菌培養検査陽性(55%)、ウエストナイルウイルス陽性(26%)という結果でした。


どこまでドナーの検査を施行するかは大きな問題です。基本的に検査費用は、医療機関の負担となるからです。尚、移植後感染症の追跡調査は35%しか行われていません。


このことに関しては日整会も問題視しており、啓発の必要があると結んでいました。XLIF等の隆盛で同種骨移植需要が増加中です。今後も注目していこう思います。




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