先日の人工股関節全置換術(THA)で興味深い発見がありました。
この方の左側は、とある高名な股関節外科医によってTHAを施行されています。


今回は右側の手術を行うことになりました。術前CTで作図していると、その高名な股関節外科医によるTHAでステムの前捻角が55度もあるではないですか!


幸い、まだ前方脱臼をしたことは無いようです。しかし、私は心の中で「あ~、あの○○先生も名前の割りには大したことないな」と思いました。



ところが、手術当日に麻酔がかかって体位設定をしようとしたときに異常に気付きました。高名な股関節外科医によって施行された側の下腿の外捻角度がかなり大きかったのです。



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このため、膝関節を中間位にしたときには、上図のように足部が著明に外側を向きます。そして、足部を垂線方向へまっすぐにすると、膝関節は内側に向かいます。


ステムの前捻角が55度であっても、足部を基準に考えると下腿外捻に打ち消されて生理的なステムの前捻角は、通常の20度ほどにおさまっていたのです。



う~ん、さすがは○○先生です。高名さはダテではなかったようです。このようなイレギュラーな症例にもきっちり対応されているところは流石と言わざるを得ません。


一方、今回の術側は反対側ほど下腿外捻が高度ではないものの、それなりに外捻しています。このため大腿骨頚部前捻角が45度であるものの、S-ROM-Aの出番はありませんでした。


大腿骨頚部の過前捻症例では、過大な下腿外捻の有無を確認した方が良いと思います。そのような症例であれば、大腿骨頚部の過大前捻はさほど気にする必要が無くなりますから。




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