先日、80歳の女性が膝関節部痛で初診されました。
少し水腫があったので、ヒアルロン酸の関節腔内注射を施行しました。
「お大事に」と言ったところ、「そういえば半年前から母指が動かしにくいんです」とおっしゃられました。この方には、3年前に橈骨遠位端骨折に対して掌側プレートによる手術を施行しています。
再度診察すると、たしかに母指IP関節の自動屈曲が不能でした。長母指屈筋腱断裂を併発していそうです・・・。FPL損傷は、掌側ロッキングプレート後の合併症として有名です。
おそらく、この患者さんもFPL損傷を併発したのでしょう。文献的には掌側ロッキングプレート後にFPL断裂を併発する原因として下記が挙げられています。
- 遠位設置や斜め設置等のプレートの設置位置不良
- プレートの遠位がWatershed lineを超えている
- スクリューの突出
- プレートの浮き
- ステロイドの長期使用
しかし、今回の症例はWatershed Line Design Plateで、プレートの設置位置不良や浮きもありません。特発性なのでしょうが、ちょっとショックでした。
一瞬、FPL再建術も頭をよぎりましたが、80歳を越える高齢者に腱移植術を施行するのは少しやり過ぎだと判断して、このまま経過観察することにしました。
余談ですが、掌側ロッキングプレート後のFPL断裂の場合、少し時間が経過してから手術に至るケースが多く、腱以降術や腱移植術を併用せざるを得ないことが多いです。
手術手技自体が難しいので、掌側ロッキングプレートを施行した患者さんに対して、術後のFPL断裂の併発を防止するために、全例で抜釘術を行う方もいます。
この方針については議論の余地がありますが、掌側ロッキングプレート後のFPL断裂はWatershed Line Design Plate使用だからと言って、安心できないことは注意するべきでしょう。
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