先日の骨切り術は賞味期限切れかも・・・で大きな反響がありました。学会で声を上げることは憚れる内容ですが、同じように感じている先生が居て安心しました。


私は、これと似たような趣旨のことを常に考えています。それは「新規性のある治療か、長期成績の出ている治療のどちらを優先するのか」という命題です。


医療の世界は日進月歩です。このため、世界中で医療技術のイノベーションが、毎年のように生み出されています。学会で注目される華々しい新規性のある治療法は垂涎の的です。


特に脊椎外科の領域で、多くのイノベーションが出現しています。しかし、これらのイノベーションが本当に素晴らしい治療法であるか否かは、10年以上経過してみなければ分かりません。


例えば、XLIFやOLIFのように多椎間固定して、脊椎アライメントを修正するような治療法は、数十年スパンでみて、本当に患者さんに資するのか?


20~30年先の医師が「何故あの時代の医師は、多椎間固定をしまくったのだろう?」と思わない保証は無いと思うのです。


既に結果が出ているイノベーションの失敗例として、股関節外科の分野ではメタル・オン・メタル人工股関節置換術(Metal-on-Metal THA, MoM THA)が挙げられます。


MoM THAは、金属摩耗粉が原因で局所的に組織毒性を有することが知られており、偽腫瘍や組織壊死などをきたすARMD(adverse reaction to metal debris)が報告されています。


MoM THAが脚光を浴びていた時は、私も使用したいと思いましたが、長期成績の出ている治療ではないという理由で使用しなかったことを覚えています。


医療に関して、私は非常に保守的なのです。もちろん、このような姿勢は諸刃の剣です。全員が私のようにイノベーションに消極的なら、医学の発展は望めないからです。


私のように、長期成績が出ている治療法だけを選択する姿勢は、ある意味卑怯なのかもしれません。それはいいとこ取りだからです。このあたりの匙加減は難しいですね・・・




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