先日、整形外科の常勤医師が居ない病院で夜診をしている際に、興味深い患者さんの診察を行いました。何でも右股関節が痛くて歩行できなくて入院になったそうです。
大腿骨近位部骨折はありませんか? という対診依頼だったのですが、単純X線像では特記する所見はありませんでした。自分で車椅子から診察台に移れる程度の疼痛のようです。
しかし、診察台で仰臥位になってくださいと言っても「痛くて上を向けない」と言って、すぐに側臥位になってしまいます。う~ん、困った患者さんだな・・・
強く仰臥位を促すと、両膝を屈曲位にします。高齢患者さんなのではっきり分からないのですが、膝を伸ばすと右股関節に疼痛が走るようです。ここてピンときて、CTを撮像しました。
やはり、図星でした。右腸腰筋膿瘍です。熱発はなく、血液生化学データの炎症値は軽度上昇程度です。総合的に考えると、結核性の腸腰筋膿瘍を強く疑います。いわゆる流注膿瘍です。
高齢者の進展に伴って、腸腰筋膿瘍は比較的ポピュラーな疾患になってきています。私の経験では、年に1~2例ほどのペースで治療している印象です。
しかし、起炎菌は黄色ブドウ球菌や大腸菌等のグラム陰性桿菌が多く、症状・身体所見・血液生化学所見が派手な症例が多いです。今回とは全く状況が違います。
今回の症例では、後から考えるといわゆるpsoas positionをきたしていたのですが、仰臥位を嫌がるので、初見時には分かりませんでした。
「股関節部痛のため仰臥位を嫌がる = psoas position」が、私にとってのTIPSでした。特に流注膿瘍のように、身体所見や血液生化学所見に乏しい症例では注意が必要だと思います。
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ワーファリン使用している患者で数例経験があります。